浜松城にやって来た夏鳥のミゾゴイ(溝五位)、お城の森は好物のミミズが豊富。浜松市民の沢山の愛情を受けて今年は四羽の子供たちが一人前に。

 浜松城のミゾゴイ(溝五位)は多くの野鳥写真家がブログで取り上げており、一度は実物を見たいと思いながら実現できずにいましたが、今回先輩カメラマンのMさんと意気投合し電車を乗り継いで現地を訪ねました。

 

 ミゾゴイ(溝五位)は、ペリカン目サギ科の野鳥で、その生態分布は、中国南東部、フィリピン、台湾、そして日本では本州以南に。主に日本に夏鳥として飛来し繁殖を行い、冬季はフィリピンに南下して越冬するとのことです。台湾や日本では九州や南西諸島で少数個体が越冬するとか。八重山諸島でズグロミゾゴイが留鳥になっているそうです(☆)。

 

 平地から低山地にかけて森林で生息し、特に暗い森林を好むそうです。単独かペアで生活、食性は動物食で、魚類、昆虫、甲殻類(沢蟹)を食べるとのことです。ヨシゴイなどと同じように木の上などでは樹に擬態を行い、その鳴き声から、ウシドリ、ウメモドリ、ヤマイボなどとも呼ばれるそうです。ミゾゴイ(溝五位)は、森林の伐採などで個体数が減少しており、環境省のレッドリストで絶滅危惧種に指定されています(☆)。

 

 ここ浜松城の天守閣周辺の森は、自然の落ち葉が堆積して豊富なミミズが生息しており、ミゾゴイが生活するうえでは困ったことはありません。難点は、公園なので多くの人の出入りがあることですが、ここ浜松城下の人達もこの野鳥を受け入れて優しく見守っています。何よりミゾゴイ自身が人に馴れているのかあまり怖がらないのが救われます。

 

 この五月、ミゾゴイで盛り上がった浜松城公園ですが、野鳥写真家がいるだろうとの思惑も外れ一人も見当たりません。公園を管理する方に巣の場所を教えて頂きましたが、雛たちは巣立ちしていて巣の周りはもぬけの殻です。半ば諦めムードでしたが、打破したのはMさん、眼のいいMさんは、藪の中に潜むミゾゴイを見事に探し当てました。待っていると、小学生の子供たちの蝉を捕る声に触発されて飛び上がり、樹の上の枝に止まってくれました。

 

 多くの野鳥を観察してきましたが、このミゾゴイ、スローモーションの映像を見ているようなゆっくりした動作です。生存するためには、過敏過ぎるのも問題ありますが、鈍感なのも問題があるように思えます。ただ、緩慢な動きは居場所を発見しにくくする効果はあるのかも知れません。件のミゾゴイも首を長く伸ばして樹に擬態をしたりしていました。目立たない地味な色彩のミゾゴイですが、よく見ると羽根に濃いブルーのラインもあったりして綺麗な鳥です。

 

 浜松市民に愛されるミゾゴイ(溝五位)、野鳥写真家たちにとっては隠れたアイドルとして多くの写真家を引き付けることでしょう。公園沿道は、市民の散策コースなのでくれぐれも邪魔にならないよう、三脚の使用は控えて手持ちの撮影が望まれます。

 

注)☆印は、Webウィキペディアのミゾゴイの解説を参照し、一部引用しています。

撮影場所;静岡県浜松市中区元城町 浜松城公園

撮影日;2019.7.24