暖冬の影響なのか?幻の鳥と呼ばれ人前には滅多に顔を見せない「ヒクイナ(緋水鶏)」が、遊水地の葦原で元気に越冬中。

 平塚市の葦原には毎夏やって来て、オオヨシキリの鳴き声の間から時折トン、トン、トンと戸を叩くように鳴いていました。この個体は冬を迎える前に南の方に渡っているようでしたが、横浜市の遊水地にいる個体は葦原で越冬を続けています。気候変動のせいなのでしょうか。

 

 以前にも「ヒクイナ(緋水鶏)」を取り上げましたが、ウィキペディアの解説では、紫式部の源氏物語(明石)や兼好法師の徒然草の中で、その独特な鳴き声に思いを馳せ古典文学の世界でも取り上げられていたようです。昔の文人達が私たちのように野鳥を追い掛け回していたわけではありませんので、警戒心の強いヒクイナの姿は恐らく確認できなかったのでは。トン、トン、トン、トンと戸を叩くように強弱を付けて心細げに聞こえてくる鳴き声に、昔の文人たちは心を揺り動かされたのかも知れません。

 

 古典文学にも登場するヒクイナ(緋水鶏)ですが、夏季に繁殖地として中国東部、台湾、日本などで、冬季にはインドシナ半島、中国南部、日本(本州中部以南)に渡って越冬を行うとのこと(☆)、この野鳥は限られたエリアでしか見られないようです。生態は、湿原、河川、水田などに生息し、食性は動物食の強い雑食で昆虫、軟体動物、カエルなどを食べるとのことです(☆)。

 

 人前には滅多に顔を出さないヒクイナですが、この遊水地の個体は人を余り恐れません。素早く動くのでピント合わせは大変ですが、餌を摂る間は姿をしっかり見せてくれ、ルビーのような赤い目と燃えるような赤い胸周りの美しさに見とれてしまうほどです。最初にこの鳥を見た人は、火の鳥がいると驚いたことでしょう。

 

 昨年、平塚市の葦原では番いでいて無事繁殖が確認されています。ヒクイナは準絶滅危惧種に指定されており、年々個体数が減少しているとのことです。遊水地のヒクイナも春は目の前、しっかり栄養を付けて乗り切って欲しいものです。

 

注)    ☆印は、Web版ウィキペディアのヒクイナの解説を参照し、一部引用させていただきました。 

撮影場所;神奈川県横浜市泉区

撮影日;2020.2.21