「ツバメ(燕)」の親鳥が魅せる子供達への疾風給餌。遊水地の池面上空の昆虫を空中で捕縛、飛翔しながら枝先の子供達へ次から次とホバリング給餌。

 6月は夏鳥たちの繁殖の最盛期。ツバメの雛たちは大きく育ち、いよいよ巣立ちを迎えています。飛翔訓練のため近くの遊水地に連れて来られた雛たちは、強風にもかかわらず葦や草木の枝先に必死にしがみつき、親鳥の運んでくる餌を待っていました。

 

 つい先月まで枯草の多かった遊水地は、若葉も濃い青葉となり初夏の趣が増していました。4月の初め頃やってきた夏鳥の「ツバメ(燕)」ですが、遊水地にやってきては巣材の泥をしきりに運ぶ様子を見てきました。久し振りに訪ねた遊水地には、すっかり成長した子供のツバメたちが思い思いの草木の枝先に止まり、親の運んでくる餌を待っていました。

 

 日本で繁殖するツバメの越冬地は、Webウィキペディアの解説によれば、台湾、フィリピン、ボルネオ島北部、マレー半島、ジャワ島などとのことです。中日本から西日本の一部地域では、越冬する個体もいるとのことですが、繁殖した個体がそのまま居残りをしたものか、シベリア付近から渡って来たものかは分かっていないようです。森昌子が歌った「越冬ツバメ」の詩では「季節にそむいた冬のツバメ」と歌っていますが、シベリア付近から渡って来たものとすれば必ずしも季節外れではないのかも知れません。

 

 ツバメは、古来、水稲栽培において穀物を食べず害虫を食べてくれるので益鳥として大切に扱われてきました。また、ツバメは他の野鳥と違って人家の近くに巣を作るので親しみやすい側面もあったようです。地方に行くと昔ながらの日本家屋が残っていますが、そうした家屋の特徴として家本体を雨から守るために軒下や庇を広く取っており、ツバメの巣造りの場所として最適な条件がそろっていました。近代建築に様変わりした家屋に巣造りはできませんので、ツバメたちの巣はどのように造られているのか興味のある所です。

 

 境川遊水地公園付近で営巣していたツバメたちは、雛が幼鳥へと大きく成長し巣立ちを迎えたようです。幼鳥たちは親鳥に連れられて遊水地に来ており、思い思いの枝先に止まっていました。折しも低気圧が来ていて強風となっており、ツバメの子供たちは、風に煽られて枝が揺れるのに負けまいと必死にしがみつき、親鳥がホバリングしながら口移しで貰う餌を上手に受け止めていました。これらの給餌の状況は瞬時のことなので私たちの目には、子供の脇で一瞬羽ばたきをしているなとは分かりますが、餌を受け取ったかまでは全く判別できません。ツバメの親が空中で捕食する昆虫は小さいけれども、休むことなく池面を滑空して捕食を繰り返し、散らばる子供たちに平等に食べ物を上げていました。野鳥の世界では、子供への虐待は存在しないようです。

撮影場所;神奈川県横浜市泉区 今田遊水地

撮影日;2020.6.11