すくすくと育った二羽の「コウノトリ(鵠の鳥)」の雛たち。ひかるお父さんと歌お母さんの愛情を一身に受けて巣立ちは間近か?

 栃木県小山市(おやまし)では、渡良瀬遊水地内に於いて二羽のコウノトリがペアリングを確認後、遊水地内に人工の営巣塔を作るなど、コウノトリの保護支援活動を続けられておりましたが、2020年6月8日、二羽の雛が無事誕生しました。先ずは、二羽の雛、誕生を心よりお喜び申し上げます。

 

 「コウノトリ(鵠の鳥)」は国の特別天然記念物になっており、環境省では絶滅危惧種に指定し、これまで動物園の人工繁殖や2005年9月には飼育個体の放鳥など保護活動が続けられ、2018年に飼育個体数100羽、野外生態個数144羽でしたが、2020年現在では、野外生態個数は200羽を超えるまでに増えているとのことです(☆)。コウノトリの自然繁殖例は、2007年7月、一つのペアから一羽が孵化し巣立った例がありましたが(☆)、小山市の人工営巣塔による自然繁殖はそれを上回る快挙と言えます。コウノトリ雛誕生のニュースは小山市のみならず、福井県越前市でも四羽の雛が無事巣立ちしたとの報道もありました。野鳥観察家としては、コウノトリがサギやツルのように自由に空を舞う姿を見て見たいと願っています。

 

 コウノトリの分布は、日本、台湾、韓国、北朝鮮、中国、ロシアなど極東方面のみとのことです。和名のコウノトリは、

漢字て「鵠の鳥」と表記しますが、鵠はクグイとも読み大形の水鳥を意味するとのことです。主なる繁殖地は中国の北東部、ロシア南東部のアムール川やウスリー川流域で繁殖し、冬季は韓国、日本、台湾、香港、長江中流域へ南下して越冬するとのこと(☆)。分布域は東アジアに限られ、推定総数は2000~3000羽で絶滅の危機にあるとのことです。Webウィキペディアのコウノトリの解説では、日本での繁殖や周年生息する個体は絶滅したとの見解でしたが、小山市や越前市の取り組みもありもうじき書き換えられることでしょう。

 

 小山市は2008年5月、渡良瀬遊水地周辺の環境を整備し、「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する国際条約」いわゆる、ラムサール条約の登録地を目指し、日本野鳥の会栃木県支部などがバックアップして、2012年、 COP11において登録が認められました。そうした状況の中で、2018年2月、渡良瀬遊水地に千葉県野田市の「こうのとりの里」から一羽のコウノトリ(雄4歳、ひかる)が来訪・定住し、2020年3月に徳島県鳴門市からやってきた雌のコウノトリ(雌2歳、歌)と同年6月8日、めでたく婚儀が整い、小山市に婚姻届けを提出したとのことです(☆☆)。

 

 小山市のコウノトリ情報は、「風のむろさん」のホームページに鳥仲間が寄稿しており、今回、鳥仲間のT先輩と一緒に現地を訪ねて見ました。現地はどこまでも水田が続く一角にありますが、小山市では親切に立看板を要所に用意してくれ、直ぐ分かりました。堤防が見えてきて到着間近になった時、T先輩が田圃の中のコウノトリを発見します。実は鳥よりも先にカメラマンを確認したとのこと。営巣塔から田圃までの距離は近く、地元の写真家の話では、夫のひかる君が好んで餌を捕りに来るとのこと。妻の歌さんは別の田圃に行くらしい。どうして見分けられるか教えて頂くと、足環以外に、GPSのアンテナが付いている方が夫のひかる君とのことです。水田で採餌するひかる君は、人を恐れずかなり近くまで寄って来ます。ひかる君、何を捕っているか写真を整理すると、ドショウが主で時にカエルを咥え、かなりの量を飲み込んでいました。

 

 十分な量を確保すると、渡良瀬遊水地の第2調節地に造られた、人工の営巣塔に向って飛び立ちました。コウノトリは、大木などの樹上に巣を作るそうですが、遊水地には大木がありません。そこで苦肉の策で、小山市がひかる君と歌さんに提供した仮設住宅(営巣施設)は、送信塔の上にトーチを取り付けたような形状の物を用意した訳です。送信塔のトップは、写真のように巣材の小枝が絡められるような工夫がしてあります。写真でしか分かりませんが、ひかる君が採餌してきたドジョウやカエルは子供たちの前に吐き戻され、二羽が与えられた餌を啄んでいる様子が確認できました。コウノトリは、他の小鳥と違って餌をクチバシに押し込むのではなく、撒いた餌を雛たちが捕って食べるという方法のようです。また、先に現場に移動していたT先輩の話では、ひかる君が到着すると入れ替わりに歌さんが巣を離れたということで、夫婦共同で育児に当たっていることも分かりました。

 

 小山市のコウノトリの雛たち、巣立ちは7月の後半頃でしょうか。二羽だけなので心配ですが、豊富な餌を沢山食べて元気に巣立って欲しいものです。人工の営巣塔で育った雛たちは、もう人工的などと抵抗は無いことでしょう。第3、第4の営巣塔が次々とでき、コウノトリの一大コロニーが目指せれば、絶滅から脱却する日が近づくものと信じています。最後にコウノトリの支援に当たる小山市の関係者の皆様には厚く感謝いたします。

 

注) ☆印は、Webウィキペディアのコウノトリの解説を参照し、一部引用しています。☆☆印は、小山市(おやまし)ホームページ及び環境省ホームページを参照しています。  

撮影場所;栃木県小山市生井 渡良瀬遊水地第2調節地周辺

撮影日;2020.7.7