日本で絶滅危惧種の「コアジサシ(小鯵刺)」。大雨で繁殖地は壊滅の中、千葉市美浜区の検見川浜は、官民一体の手厚い保護で繁殖数が増加。浜辺の雛たちは、採餌と飛翔の厳しい特訓。

 夏鳥として日本にやってくる「コアジサシ(小鯵刺)」は、環境省では絶滅危惧種のⅡ類に指定しています。先日、ハスカワの写真を撮影している折、知り合いのCMさんから貴重なコアジサシの撮影情報を頂きました。県内では酒匂川の下流域での営巣が、今年は大雨で壊滅したとのこと。そんな中、教えて頂いた場所は繁殖が確実に増加しているようです。

 

 千葉市美浜区の検見川浜は、東京湾の奥にあたり湾のほぼ中心に位置します。ネットで調べるとNPO法人のリトルターン・プロジェクトのメンバーは、数は少ないものの当地にコアジサシが営巣していることを確認し、昨年(2019)から千葉市の環境保全課と共同で繁殖場所の整備に努めてきたとのことです。今年と同じように営巣場所となる砂丘をロープで囲い、立ち入り禁止にして保護してきたとのこと。昨年は、NPOの調査では(2019年8月20日現在)、10羽が巣立ちしたそうです。今年は?。正確に数えていませんが、市やNPOの地道な活動が功を奏し確実に繁殖数が増加しています。

 

 コアジサシは、チドリ目カモメ科に属し、ユーラシア大陸の中緯度地域で繁殖し、アフリカからオーストラリアにかけての沿岸部で越冬し、カリブ海沿岸域やハワイ諸島にも分布している。日本では、本州以南に夏鳥として渡来し繁殖します。繁殖地が減少して個体数が減って来ており、減少の一因にはカラスによる捕食も考えられています(☆)。昨今の気候変動による大雨、これも今後減少の要因になるかも知れません。現に酒匂川の中州に渡来し営巣したコアジサシは、大雨による増水で流されてしまったとのことです。

 

 コアジサシは、全長が24センチメートルでツグミやヒヨドリと同じくらいの大きさです。翼を広げると51センチメートル位になり、尾羽が細くとがっていて飛んでいる姿はツバメのようです。夏羽は、頭が黒く、額、のど、腹が白く、冬羽はクチバシと脚が黒くなり、額の白い部分が広くなるとのこと(☆)。海岸や川などの水辺に生息し、巣は川原や砂浜、埋め立て地などで集団で繁殖地(コロニー)を作り、外敵から集団で防御します。卵は2~3個を産むとのこと。

 

 コアジサシの餌の捕り方は独特です。ホバリングして小魚を見つけると水の中目掛けて真っ逆さまに急降下し、獲物をゲットします。戦闘機が真っ逆さまに落ちるような感じです。和名の「鯵刺」は、この様子から名付けられたとのことです。因みに英名はLittle ternで、NPOリトルターン・プロジェクトもこの名称を用いており、同NPOは、活動を続けて10年になるとのことです。生態系を地道に支えて頂いている訳で頭が下がります。NHK「ダーウィンが来た」では、野生動物と人間社会の共存について取り上げていますが、NPOもコアジサシの繁殖をとおして千葉市民の理解を深めるため環境学習のリーダとして活躍されることを期待いたします。

 

 観察地に到着したのは午前9時頃で、CMは管理人一人だけでしたが10時過ぎころから少し増えてきました。到着して雛が残ってはいないかと囲いの中を探しましたが、雛は皆巣立ちをしてしまったようです。浜辺を散策している人が防波堤に近づいた時、鳩のような白い野鳥が一斉に飛び立ちました。コアジサシです。よく見ると、飛ぶのがまだ苦手な幼鳥が何羽か残っていました。暫くすると飛び立った群れが舞い戻ってきました。殆どが幼鳥でかなりの数がいます。幼鳥たちは思い思いの場所で休んでいますが、羽根をばたつかせ餌をねだる仕草をする幼鳥が出てきます。最初確認できなかったのですが、親鳥が近づいているのを子供は察知しているのです。給餌は、あっという間の出来事です。なので、親鳥が確認出来たら子供にフォーカスしておき連射することをお勧めします。失敗なく給餌シーンが撮れると思います。

 

 管理人が観察した限り幼鳥の飛翔力はまだまだで、親鳥は餌を見せながら、飛んで来いと催促をしていました。餌を見せずに威嚇して飛翔を促す親鳥もいます。幼鳥の中には、親鳥を真似て採餌に挑戦するものもいましたが、戦闘機のように真っ逆さまにノーズ・ダイブ(急降下)する輩はみられず、海面には足から着地するソフトランディングでした。来月の渡りの時期までには、親鳥のように頭からダイブして小魚をゲットできるようになるでしょうか。千葉生まれの子供達、忘れないで来年も元気な姿で戻ってきて欲しいものです。

 

注) ☆印は、Webウィキペディアのコアジサシの解説を参照し、一部引用しています。文中、NPOリトルターン・プロジェクトの活動記録及び検見川浜のコアジサシの保護活動記録を参考にしています。

撮影場所;千葉県千葉市美浜区高浜7-1-1 稲毛海浜公園

撮影日;2020.7.16