相模湾に冬鳥の使者「ウミアイサ(海秋沙)」が群れで到着。二組に分かれ岩場に魚を誘導、追い込み漁は漁師顔負け。飛び出た小魚をカモメもご相伴。

 海鳥を撮影に横須賀市の長井漁港周辺を訪ねました。当地は相模湾の最東側に位置し、湾の名前は小田和湾になります。晴れた日には富士山が一望でき、近くには佐島マリーナや小さいけれども江ノ島なども臨めます。この季節は、干潮になる時間が朝早くから始まり、岩場が現れた所にやって来るシギ類を見るのが楽しみです。

 

 遠くの岩場を見渡すと、カモメが何羽か旋回しているのが見えました。旋回している下を注意して見ると、複数の野鳥が潜ったり、何羽かが飛び出して海面すれすれにしぶきを上げながら滑走しているのが見えました。何かを追いかけているようです。カモメは、その野鳥に伴走するかのように追随し、時折り海面に舞い降りて何かをゲットしています。この野鳥たち、人間のように網などの道具は一切使わないで、仲間たちで多方向から魚を追い詰め、漁師顔負けの追い込み漁をやっているのです、圧巻の漁場シーンでした。それにしてもカモメは漁夫の利というのでしょうか、ずる賢いですね。漁の主は、北国から越冬のためやって来た「ウミアイサ(海秋沙)」の群れだったのです。

 

 「ウミアイサ(海秋沙)」は、カモ目、カモ科で、語源の由来は、海に住んでいて秋が去る頃やって来るカモ(鴨)という意味で、ウミアキサがウミアイサと変化したようです。その分布は北半球側のみで、ユーラシア大陸中心部と北アメリカ中心部で繁殖し、冬季は越冬のためヨーロッパ南部、小アジア、カスピ海沿岸、中国東部、朝鮮半島、北アメリカ西海岸、メキシコ湾などに南下します。日本には冬鳥として九州以北に渡来するとのことです(☆)。

 

 全長はオスで約57センチメートル、オスは頭部が緑色の光沢がある黒色、後頭部に長くて細い羽からなる束冠羽があります。頸は白色、胸は茶褐色、背は黒色、腹は白色になります。今回のウミアイサは8羽の群れでしたが、オスの成鳥は見当たらず、エクリプスのオスが確認できました。メスは頭部が茶褐色、冠羽は短く胸から背にかけて灰褐色になります。オス、メス共にクチバシは赤い色をしています。

 

 越冬時は、海上の比較的沿岸部の浅瀬や河口、内湾などに生息します。時々砂浜に上がり休憩している時もあります。群れで行動していることが多いとのこと。先に案内したように、一羽単独で漁をするよりも、仲間で役割分担をして獲物を捕った方が効率的なのを良く知っているんですよね。食性は動物食で海中に潜水して魚類を捕食します。ウミアイサは、潜ってしまうとなかなか出てこないので確認が大変ですが、カモメが騒いでいるような時は、ウミアイサが近くにいるかも知れないので要注意です。

 

 ウミアイサの仲間には、川に生息するカワアイサがいます。カワアイサは、ウミアイサに姿形、色などがよく似ています。また、管理人は見たことがありませんが、胴の部分に模様があるコウライアイサが挙げられます。コウライアイサは、年に数羽が渡来することがあるとのこと(☆)。和名のコウライアイサは、朝鮮半島の高麗(コウライ)地方で確認されたことによるものとのことです。

 

注) ☆印は、Webウィキペディアのウミアイサの解説を参照し、一部引用しています。 

ウミアイサの群れが分担を決め、岩場に追い詰める「追い込み漁」を展開。カモメも応援?

撮影場所;神奈川県横須賀市長井 長井漁港

撮影日;2020.12.21