町田市薬師の池に、繁殖期の綺麗な「オシドリ(鴛鴦)」の雄が一羽、カルガモに混じって越冬中。群れの中には、北国からの「トモエガモ(巴鴨)」も。

 町田市の薬師池公園を訪ねました。この公園は町田から府中に至る鎌倉街道沿いにあり、谷戸の中には大きな池があります。この池は、北に延びる水田の農業用貯水池として430年前に武藤半六郎と言う方が開拓を行ったそうです。途中、埋没の被害に合いながらも復興して現在に至っており、東京都公園の名所百選にも選ばれています。

 

 木立に囲まれた谷間の公園で、入り口に入った途端、池の中端にある太鼓橋が見えてきて池面には周囲の木立が映し出されます。特に澄んだ秋は、池面が大きなキャンバスとなって青い空と木々の赤や黄色の黄葉が池面に映し出され、さざ波で混ざり合って美しさを倍増させています。管理人は「薬師」という名前をとても気に入っています。この池は、元は「福王寺池」と呼ばれていたのですが、この池の近くに現在の梅林がある場所、つまり西側の山の上に野津田薬師堂があることから、この池は「薬師」の池とも呼ばれ、1976年(昭和51年)「薬師池公園」として整備されたとのことです(※)。

 

 今回紹介する「オシドリ(鴛鴦)」は、普通は群れになって行動しており、単独で見られるのは珍しいことです。恐らく飛翔中に体力が消耗して付いていけなくなり、群れから脱落したのかも知れません。周辺の林には餌となるドングリも沢山ありますので、養生して元気に逗留して欲しいものです。

 

 「オシドリ(鴛鴦)」は、ロシア南東部、朝鮮半島、日本、中国などの東アジア地域に分布します。日本では北海道や本州中部以北でで繁殖し、冬季になると本州以南、主に西日本に南下し越冬します(☆)。オシドリは漂鳥ですが、冬鳥のように国外から渡ってくることもあるそうです(☆)。

 

 オシドリの大きさは、雄が48センチメートル、雌は41センチメートルで、雌の方が小さく地味な色彩です。雄のクチバシは赤く、先端が白色をしており雌は黒色をしています。特に雄は、繁殖期を前にして綺麗な色彩となり、普通は警戒心が強く近づいてくれないオシドリが、こんな間近で見られるのはラッキーです。

 

 「オシドリ(鴛鴦)」は、渓流や湖沼などに生息しており、水辺の木陰を好み、開けた水面にはあまり出てきません。食性は、植物食傾向の強い雑食で、水生植物、果実、種子、昆虫を採食します。この時期は、落ちたドングリの実などを好んで食べます。オシドリの営巣は、樹の洞(ウロ)などで、抱卵から育雛までメスが行い、雄は関与しません(☆)。高い洞から雛が巣立つまで謎だったらしいのですが、雛は自分から飛び降りるようです。NHKの特集番組では、北大のキャンパス内でオシドリの営巣から巣立ちまで観察した記録が紹介され、その中では雛の飛び降りる様子が紹介されました。

 

 仲の良い夫婦の例えは「オシドリ夫婦」と呼ばれていますが、実際のオシドリは毎年パートナーを変えてしまうとのことです(☆)。オシドリの和名の「オシ」は、雌雄、相愛しに由来します。昔、中国の「宋」の時代、王が臣下の美しい妻を奪ったことにより、臣下とその妻はお互いを思いながら自殺するという最悪の結果となりました。日本の戦国時代にもありましたが、この言い伝えから仲睦まじい夫婦の絆の形容を表し、途切れることがなく続く夫婦の信頼関係の契りを「鴛鴦之契(エンオウノチギリ)」と言うそうです。

 

注)※印は、町田市ホームページ、薬師池公園の由来を参照。☆印は、Webウィキペディアのオシドリの解説を参照し、一部引用しています。

撮影場所;町田市野津田 薬師池公園

撮影日;2021.1.21

※仲良しのトモエガモ。(最左) ルリビタキは、去年と違う個体が渡来。(中央2枚)   香りを放つ見頃の蝋梅。(右)