国内で越冬する鴨の中では、数少ない「ヨシガモ(葦鴨)」。今田遊水地には、6羽の雄が逗留中。昨年到着したエクリプスはナポレオンハットと鎌の刃のような風切り羽に変身。

 横浜市の今田遊水地に逗留している水鳥の中で、前回ハシビロガモを案内させてもらいました。このハシビロガモは昨年10月中頃に渡来していますが、その時一緒に確認できたのが今回取り上げる「ヨシガモ(葦鴨)」雄です。到着したての頃は、まだエクリプス(幼鳥)で、頭の部分が光線の具合でグリーンになる程度で、背中や胸は斑の紋様になっていました。

 

 横浜市の今田遊水地の広大なビオトープには、6羽の「ヨシガモ(葦鴨)」のオスと数羽のメスがこの冬を乗り切りました。実は、昨年の10月一羽のエクリプスを確認して以来、次々と渡来してきており、昨日数えてみると雄は6羽になっていました。「ヨシガモ(葦鴨)」の我が国への渡来は数が少ないので、こんなに渡来が見られるのは贅沢な限りです。

 

 「ヨシガモ(葦鴨)」は、中国、モンゴル、ウスリー、シベリアなどで繁殖し、冬季になるとタイ、ベトナム、ミャンマー日本、朝鮮半島、中国南部など東南アジア方面へ南下して越冬します。日本には冬鳥として越冬のため渡来し、北海道では少数が繁殖をしています(☆)。日本に渡来するヨシガモたちですが、シベリアや中国などから南下して来ているものと考えられます。

 

 「ヨシガモ(葦鴨)」のオスは、全長が54センチメートル、メスは少し小さく48センチメートルです。翼開長は、78~82センチメートルになります。繁殖期のオスは、頭から後頭、眼先、頬の羽衣が赤紫色、眼から後頭の羽衣が緑色をしています。これが騎兵の帽子のように見え、野鳥撮影家の間ではナポレオンハットの鴨として人気があります。喉の羽衣は白や淡黄色、黒い首輪状の斑紋があります。尾羽基部を覆う羽衣は黒く、その側面には三角形の黄色の斑紋があります。三列風切りは、鎌の刃先のように長く湾曲しており、外縁が白色をしています。

 

 「ヨシガモ(葦鴨)」の学名はAnas falcataですが、ファルカタとは、鎌とか刀の意味で、三列風切りの湾曲した模様から名付けたものでしょうか。和名の「葦鴨」はシンプルで、原にいるということで名付けられています。

 

 「ヨシガモ(葦鴨)」は、河川、湖沼などに生息し、冬季には内湾などにも生息します。食性は植物食で、種子、水生植物、海藻などを食べます。6~8月が繁殖時期で、水辺の茂みなどに巣を作り、6~9個の卵を産み、メスだけが抱卵します(☆)。今田遊水地の「ヨシガモ(葦鴨)」たちは、野鳥のためのビオトープがすっかり気に入っているようです。葦原には水鳥の他に、冬季にオオジュリンが渡来して来るようになりました。野鳥撮影をする者にとって、今田遊水地は楽しみなスポットになりつつあります。

 

「ヨシガモ(葦鴨)」は、国内で越冬するカモの中では比較的数が少なく、なかなか見かけることがありませんでした。管理人が野鳥撮影を始めた頃、近隣には広大な池も少なく、ヨシガモなどの水鳥が定着できる環境が無かったのです。最近になって、今田遊水地のような浸水対策施設の中に野鳥の棲めるビオトープが造られ、野鳥の生息環境が人工的に作られました。年数が経過して葦原なども周囲環境にすっかり馴染み、水鳥や野鳥たちの楽園になっています。すっかり気に入って長逗留を続けている「ヨシガモ(葦鴨)」たち、恐らく今年の冬も沢山の子供を引き連れて戻ってくることでしょう。

 

注)  ☆印は、Webウィキベディアのヨシガモの解説を参照し、一部引用加筆しています。

撮影場所;神奈川県横浜市泉区下飯田 今田遊水地

撮影日;2021.3.12

写真左; 昨年10月、今田遊水地に渡来した頃のヨシガモ・エクリプス。

写真右; 成鳥になったヨシガモ。風切り羽が長く湾曲し、黒い首輪がはっきりする。特徴のグリーンのハットも。