ふなばし三番瀬干潟の「ズグロカモメ(頭黒鴎)」達、早くも夏衣装の黒い頭と目の周りを白く縁取り、愛嬌ある顔立ちに変身。中国への旅立ちはもう直ぐ。

 新型コロナ感染症の対策として1都3県に延長発出されていた緊急事態宣言は、予定されていた3月21日をもって解除されることになりました。振り返ってみれば、一時の急激な増加は恐怖すら感じた程です。宣言の解除はされたものの3月は行事が続く季節、一人一人が更なる注意を払い感染防止に努める必要があると言えましょう。

 

 3月は、今月の野鳥動向でも案内したとおり、冬鳥と夏鳥の入れ替わりの時期、冬鳥たちも早いものでは繁殖地に渡る前に、冬羽から夏羽に衣替えが行われています。特に顕著に見られるのが海鳥たちです。最近のブログ「風のむろさん自然の詩」の中に、夏羽になった「ズグロカモメ(頭黒鴎)」の投稿を何人かがされており、管理人にとっては「ズグロカモメ(頭黒鴎)」は初見になるため、逗留先のふなばし三番瀬を訪ねることとしました。

 

 「ズグロカモメ(頭黒鴎)」は、中国の黄海や渤海沿岸で繁殖し、冬季は韓国や中国南東部、台湾、日本、ベトナムに渡り越冬します。日本には越冬先として主に九州に飛来し、少数が本州南部や四国、沖縄県に飛来してきます(☆)。
 全長は、29.3センチメートル、翼開長は、87から91センチメートルです。頭部は丸みを帯び、上背面は淡青灰色、下腹面は白色です。風切羽の先端は白と黒の縞模様をしており、クチバシは太く短く黒色をしていて、後肢は濃赤色です。夏羽は頭部が黒くなり、和名の
頭黒鴎・ずぐろかもめ」の由来になっています(☆)。また、夏羽になった「ズグロカモメ(頭黒鴎)」は、黒い頭になっていますが、クチバシ寄りに黒い眼があり、その眼を頭の後方から半円状に白く縁取りをして、眼があることを印象付けています。これが遠くから見ると愛嬌のある姿に映り、とても癒されます。

 

 「ズグロカモメ(頭黒鴎)」の生息場所は干潟になります。トビハゼなどの魚類やカニなどの甲殻類、ゴカイなどの多毛類を食べています。干潟になった上空を低空で飛翔し、獲物を探知すると急降下して捕食します(☆)。ふなばし三番瀬では、採餌している写真を確認すると殆どがカニを食べているようでした。ふなばし三番瀬には、今年5羽の「ズグロカモメ(頭黒鴎)」が入っているとの情報(☆☆)でしたが、全てが夏羽の4羽を確認しました。そのうちの一羽は足環付きで、左足にNU文字の白フラッグ、右足には長さ1センチメートルくらいの金属環を付けていました。

 

 「ズグロカモメ(頭黒鴎)」は、環境省のレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。これは生息場所の干潟が減少していることが第一の要因と考えられています。渡りを行う野鳥は、繁殖地と越冬地の両方が健全に生息場所を確保する必要があり、一方が駄目になればバランスが崩れてしまいます。繁殖地である中国では都市開発や農地開発で干潟が埋め立てられていると言われ(☆)、一方、越冬地の日本などでも、最大の越冬先であった諫早湾の干潟が干拓事業で奪われ、近年は飛来がなくなったとのことです(☆)。生息場所の干潟は、ズグロカモメにとって死活問題なのです。こうした問題は、我が国だけではなく、他国でも同様の状況が考えられ、「開発に当たっては野生生物との共存を念頭に進める」など強い法令措置も今後必要になるかも知れません。

 

注)  ☆印は、Webウィキペディアのズグロカモメの解説を参照し、一部引用しています。 ☆☆は、ブログ、2021.3.18付け「カワセミのまなざし」を参照しています。

 

 

撮影場所;千葉県船橋市 ふなばし三番瀬

撮影日;2021.3.19