日向渓谷の滝裏側で生まれた「カワガラス(河烏)」の雛。見届けから3週間、無事に巣立ち元気な姿を披露中。初めての光景に驚きながらも岩場を転々と。

 3月も終わりに近づきました。3月21日には、首都圏の新型コロナ感染症対策の緊急事態宣言がやっと解除されました。残念ながらここ数日感染者の数は減るどころか再び増加傾向に転じています。その要因として、より強い感染力を持つ変異ウィルスの拡大が懸念され、「感染拡大の第4波」の到来が案じられています。

 

 社会生活をする中で人の流れを抑える緊急事態宣言には限界があるのかも知れません。国は来月4月から、高齢者に向けて新型コロナのワクチン接種を計画しており、その環境を作り上げるためにも粘り強く感染防止対策の徹底が求められています。私たちの辛抱も限界に来ていますが、自分たちでやれることをもう一度見直して見ましょう。

 

 今日は知人からの情報で日向渓谷を訪ねました。管理人は日向渓谷で今月の9日、「カワガラス(河烏)」の親が餌を運び、流れる滝を潜り抜けるのを確認しています(☆)。その時の餌の運び具合から雛は相当成長しており、雛の孵化は前週の2~3日にではないかと推測しておりました。頂いた雛の巣立ち情報で孵化してから約3週間(巣立ちは、孵化して21~23日後)、予定の巣立ちだったようです(☆☆)。

 

 春の風物詩ともいえる、「カワガラス(河烏)」の雛巣立ち。渓谷の水の流れは川底が見えるくらいに透明で、岩に水しぶきが舞って辺りの岩場を濡らします。巣立ちした雛は、陽の光が少ない岩場におり、体に似合わない大きな前足3本と後足1本に爪を立て、岩をしっかり掴んでいました。足の色は灰色にピンク色が少し混じって見えます。親鳥と違ってまだ黒色にはなっておらず、周りの岩場と同じような斑紋様の灰褐色をしており、動かないとどこにいるか分からない保護色になっています。羽根は、灰褐色に少し黒味が強く体より小さめです。クチバシの色は、足の色と同様でクチバシ周りは黄色です。

 

 巣立ちして2日目の雛ですが、親から餌をもらう間に岩場を転々と歩き回り、初めて見る光景に驚き楽しんでいるようでした。感心したのは身体は小さくても親鳥と同じような行動が取れることです。岩場の間は結構強い流れにも関わらず、川底の岩を掴んで歩いていました。親鳥の歩く様子を見て、当初泳いでいるのかと思っておりましたが、拡大して良く見ると川を歩いているのです。雛も小さいながら同じように羽根をバタつかせてバランスを取り、川を歩いて岩場を移動していました。管理人が驚いたのは、足爪の掴む能力の高さです。写真にも掲載しているとおり、ロッククライマー並みに垂直壁をよじ登って行く様子にはびっくりしました。

 

 野鳥を撮影していて、親子の情愛を感じるのは、求愛・給餌の場面です。雛は、餌を持った親鳥が近づくと小さな羽根をバタつかせて存在をアピールし、同時に黄色いクチバシを開けられるだけ大きく開けて餌を要求します。それに応えるように親鳥は脇に回り、頭を横向きにして餌を深くまで優しく押し込んで上げるのです。この時期の雛の食欲は旺盛で、餌をもらったばかりなのに直ぐに大きな口を開けて次の餌をおねだりします。

 

 これまで4月の中頃が雛の巣立ちでしたが、今年は例年になく早目の繁殖となりました。巣の中に雛が残っている場合、親鳥は巣立ちした雛への給餌ばかりでなく、滝を潜って残っている雛への給餌を交互に行います。今回そうした行為が全く見られないのです。管理人の推測で確証はありませんが、今回巣立ちした雛以外は、恐らく何らかの理由で亡くなっているのかも知れません。3月の始めは寒暖の激しい時期があり、生まれて間もないヒナ達が寒さに耐えられなかった可能性も考えられます。

 

 巣立ちした雛が岩場で羽根をバタつかせ餌を欲しがる様子を見て、夫婦と見られる「カワガラス(河烏)」の親が交互に来て、大事そうにそして慈しむ様に餌を与えていました。元気に大きく育って欲しいものです。今回の繁殖は、一回目、親鳥の様子を見ていると二回目の繁殖に向けて準備をしているようにも見えます。4月の末頃には再び大家族のカワガラス一家を見ることができることでしょう。

 

注)     ☆印は、2021.3.9付け「鳥の響宴」ブログから「日向渓谷の渓流に・・・カワガラスの雛を孵化」参照。

  ☆☆印は、Webウィキペディアのカワガラスの解説から雛から巣立ちまでの期間を参照しました。 

撮影場所;伊勢原市日向 ふれあいの森日向キャンプ場付近 日向川

撮影日;2021.3.26