暖かい地域で越冬していた「チュウシャクシギ(中杓鴫)」。繁殖地に向けて40羽以上の群れが長井港の岩場で羽休め。回復次第で北国に向け渡りの開始。

 森の奥では暖かい春を迎え木々が若葉を付け、その若葉もすっかり緑が増して来ました。若葉には多くの昆虫が生命を宿し、それを狙った繁殖期の野鳥たちは雛への餌を捕るために大忙しになります。今日は、久し振りに長井漁港周辺の岩場を訪ねて見ました。春の海岸周辺には暖かい地域で越冬していた海鳥たちが渡りの途中で羽休めに来ています。

 

 到着して岩場を見渡すと岩の間から一瞬白く反転する動きがあり、良く眼をこらすと岩の上に沢山の野鳥が見えてきました。カモメくらいの大きさの鳥が沢山いて、岩場を動き回り餌を探しているのです。クチバシが長く下向きに反っており、時折り横向きになりながら岩場の穴に差し入れ捕食しているようです。ダイシャクシギよりも一回り小さな「チュウシャクシギ(中杓鴫)」です。「チュウシャクシギ(中杓鴫)」の周りには、カラフルな夏羽になった「キョウジョシギ(京女鴫)」の姿もありました。

 

 「チュウシャクシギ(中杓鴫)」や「キョウジョシギ(京女鴫)」は、この長井漁港周辺の岩場で、渡りの途中の春のこの時期と越冬地へ向かう秋の二回見ることができます。春のこの時期は、繁殖地へ向かう途中なので、「キョウジョシギ(京女鴫)」は名前のとおり京女の着物をまとった様なカラフルな夏羽になっています。WEbで「チュウシャクシギ(中杓鴫)」や「キョウジョシギ(京女鴫)」の繁殖地や越冬地を調べると同じ地域なので、両者は一緒に行動しているのかも知れません。

 

 「チュウシャクシギ(中杓鴫)」の繁殖地は、ユーラシア大陸と北アメリカの寒帯から亜寒帯にかけての地域で、冬季はアフリカ、中東、インド、オーストラリア、中央アメリカ、南アメリカへ渡り越冬します(☆)。日本には旅鳥として渡りの時期である春と秋の二回立ち寄りがあります(☆)。これらの繁殖地と越冬地は、「キョウジョシギ(京女鴫)」も共通です。

 

 「チュウシャクシギ(中杓鴫)」の体長は、約42センチメートル、翼を広げると150センチメートルはありそうです。名前の由来であるチュウシャクシギは、漢字で中杓鴫と表され、クチバシを柄杓の柄の部分に例えたものと思われます。似たシギにダイシャクシギがいますが、体長が一回り大きく60センチメートルでクチバシも比例して長くなります。

 

 渡りのこの時期、長井漁港周辺の岩場には「チュウシャクシギ(中杓鴫)」が40羽以上いたと思われます。繁殖地ではつがいで生活していますが、他の渡り鳥と同様、群れになって助け合い、行動を共にしているものと思われます。水田や干潟で生息し、食性は動物食で長いクチバシを使って砂の中のカニなどの甲殻類を捕食し、草地の昆虫類を捕食することもあります(☆)。

 

 管理人は、渡りの時期に長井漁港周辺を観察していますが、これまで5~6羽程度の群れでした。今回、 40羽以上の大きな群れを見たのは初めてです。大きな群れには監視・指令する鳥がいて、鋭く細く「ヒィー」と鳴くと一斉に舞い上がり沖合に飛び去ってしまいます。けれども周辺を周回しながら、やがて安全を確認すると次々と舞い降りてきます。小さな群れでは考えられない身のこなしで、何回か繰り返していました。

 

注)      ☆印は、Webウィキペディアのチュウシャクシギを参照し、一部引用させて頂きました。 

撮影場所;神奈川県横須賀市長井 長井漁港周辺

撮影日;2021.4.27