東南アジアなどで越冬していた「キアシシギ(黄足鴫)」が旅の途中で長井海岸に立ち寄り羽休め。栄養を付け繁殖地である北の大地へ。

 五月を迎え、森の中はすっかり夏鳥に入れ替わったようです。新型コロナ感染症の拡大は相変わらず止まることを知らず、首都圏や大阪など主な大都市圏には三回目となる緊急事態宣言が発出されました。管理人が住んでいる神奈川県でも、まん延防止措置が継続し外出自粛が求められています。野鳥撮影家にとっては辛抱の期間が続いています。

 

 5月は、渡りのシーズンにもなっています。日本を繁殖地とする夏鳥以外にも東南アジアやオーストラリアなどで越冬していた野鳥たちが北の繁殖地へ向かう途中で我が国に立ち寄る渡り鳥(旅鳥と呼ばれる)がいます。その旅鳥を観察するため先月の終りに続いて三浦半島の西海岸に位置する長井漁港周辺を訪ねました。

 

 水鳥の撮影は、撮影ポイントが広く森の中の野鳥撮影と違い密になることがないのでお薦めです。この地域は潮が引くと砂浜や岩場に小魚やカニ類などが取り残され、多くの野鳥たちが集まってきます。到着して早速、岩場を観察すると「キアシシギ(黄足鴫)」とキョウジョシギが仲良く岩の上に佇んでいるのが見えました。キョウジョシギは群れで沢山確認できましたが、「キアシシギ(黄足鴫)」はこの一羽だけしか見えません。

 

 「キアシシギ(黄足鴫)」は、夏季にシベリア北東部やカムチャッカ半島などで繁殖し、冬季は東南アジアやニューギニアそしてオーストラリアなどに渡り越冬します(☆)。日本には旅鳥として北海道から沖縄までの各地に途中立ち寄りを行います。春は、4月から5月、秋は少し長く7月下旬から10月頃まで観察できます(☆)。「キアシシギ(黄足鴫)」は、他の野鳥同様、個体の減少が見られており、国際自然保護連合(IUCN)では軽度懸念に指定、管理人の住む神奈川県や東京都では絶滅危惧Ⅱ類に定めています。

 

 「キアシシギ(黄足鴫)」の全長は25センチメートル、キョウジョシギより少し大きく、翼を広げると55センチメートルになります。繁殖地に向かうため観察した個体は夏羽になっていると思われます。成鳥の夏羽は身体の上部が灰褐色で眉班の下面は白色、頭から頸(クビ)にかけて灰褐色の縦斑があり、脇から胸にかけて横斑があります。冬羽は身体の下面が淡い灰褐色になり身体下面の斑は不鮮明とのことです(☆)。

 

 越冬地での「キアシシギ(黄足鴫)」の生態は、砂浜や干潟、磯、水田などに生息します。群れで行動しており、海岸部から離れた河川でも観察されることがあります。繁殖期は、樹木のまばらな草原や川原、小石が混じったツンドラ地帯に生息します。水深の浅い場所でカニや昆虫類などを捕食します(☆)。

 

 同じ旅鳥のシギに、足の色が赤色と青色の鴫がいます。それぞれアカアシシギ、アオアシシギと呼ばれ、アカアシシギは飛来数が少なく管理人はまだ撮影したことがありません。これらの野鳥は、休耕田などに立ち寄り羽休めをしているのですが、年々休耕田の数が減り野鳥の羽休めの場がなくなってきています。1970年代、米の供給過剰を調整するため減反政策として休耕田には補助金を出した時期がありました。現在はそうした補助制度はなくなっていますので、休耕田にする農家が少なくなっているのも事実です。野鳥にとっては羽休めができる休耕田は必要な場であり、農家にとっても連作障害を防ぐメリットがあります。野鳥の生息支援として課税の減免など何か手立てが取れないものでしょうか。

 

注)  ☆印は、Web版ウィキペディアのキアシシギの解説を参照し、一部引用しています。

撮影場所;神奈川県横須賀市長井 長井漁港周辺

撮影日;2021.05.16