渓流の砂州に巣立ちした幼鳥連れの「キセキレイ(黄鶺鴒)」を発見。喉の黒い育メンのお父さんは働き者、砂州を忙しく回って次々餌をゲット、一目散に口を大きく開けて待つ我が子に給餌 !!

 盛夏を迎えた森の奥では、温かい気候と豊富な食べ物で野鳥たちの繁殖ラッシュ。今年6月、育児休業法が改正され、お父さんの育児に専念する機会が法律で保護されることになりました。人間社会では育児に専念するお父さんを育メンなどと呼ぶようですが、野鳥の世界は夫婦協力が当たり前、森の奥で「キセキレイ(黄鶺鴒)」親子の給餌を確認しました。

 

 6月も後半に入ると樹木の葉が大きく成長し、野鳥たちは葉陰に入って容易に顔を見せてくれません。そんな訳で水場に来る鳥を狙うことにしました。森の奥の渓流、とりわけ流れの緩やかな小川には砂州などができ、そこには多くの水生昆虫が棲息しています。野鳥たちは飲水と採餌のためやって来るのでそれを待つことにしたのです。

 

 砂州に降りて暫く待っていると、近くの樹木から野鳥が2羽ずつ次々舞い降りてきました。胸元が黄色い、「キセキレイ(黄鶺鴒)」です。2羽ずつがペアになって、遠い場所と近くの場所にそれぞれ分散して降り立ちました。尾が短く、クチバシがやや黄色味を帯びた幼鳥連れの親子のようです。撮影場所近くに来てくれたのは、喉元が黒くて黄色みが鮮やかな、オスのキセキレイと巣立ちしたばかりの幼鳥でした。

 

 観察した渓流は、普通の流れそのものが緩やかで、大きな砂州の中心を小川ができている感じです。キセキレイのお父さん親鳥は、連れの子供を砂州の一角に置き、食べ物を探し始めました。長い尾を上下に振りながら、忙しく動き回り、あっという間にクチバシにはカゲロウや芋虫の幼虫を咥えています。すると我が子目掛けて飛んで近寄り、大きな口を開けて待つ我が子にクチバシで優しく押し込んで与えていました。

 

 「キセキレイ(黄鶺鴒)」の世界的な分布は、ユーラシア及びアフリカ中部から南部に分布します。日本では九州以北に分布し、留鳥または漂鳥です。スズメ目、セキレイ科に分類されており、体長は20センチメートル、細身で尾の長い鳥です(☆)。主に渓流などの上流の水辺に生息しており、セグロセキレイやハクセキレイなど他のセキレイとは棲み分けがされています。また、季節によって生息場所を変えており、夏季は渓流などを好み、冬季は市街地の水辺などで観察されることもあります。積雪地などに棲む個体は、冬季に暖地に移動していく漂鳥です。冬季は単独で、夏季はツガイで縄張りを持ちます。オスは縄張り意識が強く、他のセキレイが浸入すると攻撃して追い払うとのことです(☆)。

 

 他のセキレイと比べると人間に対する警戒心が強く、容易に近付いてはくれません。食性は動物食で、尾を上下に振って水辺を歩きながら水中の岩陰や落ち葉などの裏に隠れた昆虫やクモ類を採餌します。また、飛翔する昆虫を飛びながら捕獲する、フライングキャッチをすることもあります(☆)。

 

 崖のくぼみや枝の茂みなどに枯草や植物の根を使って皿状の巣を作り、4から6個の卵を産み、抱卵は12~14日でメスが行います。観察した幼鳥のキセキレイは、6月の上旬頃抱卵し孵化したもので、巣立ちから何日かが経過しているものと思われます。名前の由来は、胸から腹、尾羽の一部にかけて黄色であることによります。なお、特徴である、尾羽を上下に振って歩くことから、「石たたき」あるいは、「庭たたき」などとも呼ばれます(☆☆)。鳴き声は、チチッ、チチッと飛翔しながら鳴きます。

 

注)    ☆印は、Webウィキペディアのキセキレイの解説を参照し、一部引用しています。☆☆印は、サントリー愛鳥活動のキセキレイの解説を参照し、引用しています。 

撮影場所;山梨県甲州市塩山 柳沢峠笠鳥林道

撮影日;2021.6.25