今年も境川遊水地は色々な鴨たちが続々到着、静かな池は急に賑やかに。池面上空は、珍しい旅鳥の「クロハラアジサシ(黒腹鯵刺)」が小魚探知のため周回。探知するや狙いを定め急降下、一瞬でゲットし呑み込むと次の狩りに向け飛翔。

 10月は季節の変わり目、衣替えの時期に当たります。いつも感じることですが、季節の変化は徐々にと言うことがありません。昨日まであんなに暑かったのに、今日はコートやジャンバーなど防寒着が必要になるのですから。全国のコロナ感染症の罹患者は、魔法でもかけられたように沈静化に向かっています。収束の兆しでしょうか。

 

 今日は、先輩の鳥友さんから情報を頂き境川遊水地公園に行ってきました。境川遊水地公園は、南側の俣野遊水地と今田遊水地がありますが、教えて頂いた冬羽「クロハラアジサシ(黒腹鯵刺)」は、上流側の今田遊水地にいました。到着した時、鴎のような白い野鳥が池面を周回していましたが、採餌に満足したのか活動が一段落し、下流側の取水口近くに突き出たパイプの上に止まり、お休みモードに入ってしまいました。

 

 2年前の2019年10月にも、この地には珍しい「ハジロクロハラアジサシ(羽白黒腹鯵刺)」が入り、野鳥撮影家達を楽しませてくれました。それが今年は「クロハラアジサシ(黒腹鯵刺)」です。境川遊水地公園は、通過点のコース上に当たるのでしょうか。日本ではこの他にクロハラの付くアジサシ類として3種目に、「ハシグロクロハラアジサシ(嘴黒黒腹鯵刺)」が確認されています。「クロハラアジサシ(黒腹鯵刺)」も旅鳥で立ち寄る数は少ないと言われていますので、珍鳥の部類に入るかもしれません。

 

 クロハラの付くアジサシ類の名前の由来は、夏羽をイメージして付けられたもので、この時期の冬羽からは想像がつきません。以前観察した「ハジロクロハラアジサシ(羽白黒腹鯵刺)」も同様で、ハジロ・羽白は合点がいきますが、腹は黒くはないのですから。夏羽と冬羽が全く違う野鳥の判別は本当に困りものです。野鳥図鑑を調べると3種の中でも冬羽が黒腹なのは、唯一「クロハラアジサシ(黒腹鯵刺)」だけです。

 

 「クロハラアジサシ(黒腹鯵刺)」の分布は、ヨーロッパ南部から中央アジア、アフリカ、南アジア、中国東北部、オーストラリアで繁殖し、北方で繁殖した個体は冬季、アフリカ、インド、オーストラリアに南下して越冬します(☆)。日本でも旅鳥として5月から10月にかけて各地で観察されますが、数は少ない(☆)。「クロハラアジサシ(黒腹鯵刺)」の体長は23~29センチメートル、翼開長は64~70センチメートルです。夏羽は、頭上が黒く頬は白色、胸、腹、背中は灰黒色、翼は灰色、クチバシは暗赤色です(☆)。冬羽は、頭から腹は白く後頭部と目の後方に黒斑があり、クチバシと足は黒くなります(☆)。観察した個体のクチバシの色は暗赤色から黒味が増したものの足はまだ赤色でした。

 

 非繁殖期は、海岸、干潟、埋立地、湖沼などに生息し、内陸部の水域にも入ります。群れを形成することが多く、繁殖期は湿地や湖沼などの周辺に生息してコロニーを形成します。食物は動物食で小魚、昆虫類を捕食し、水中の餌を捕食する時は、水面をクチバシですくうようにして捕食するのが特徴です。また、小魚を捕食する時は、水面に浅くダイビングすることもあります(☆)。観察した「クロハラアジサシ(黒腹鯵刺)」も池面の上空を旋回して獲物を探知し、見つけると急降下して水面の小魚を捕食していました。これら一連の捕食行動は電光石火で、私たちの目で追いかけるのは困難です。捕食が終われば何事もなかったようにすぐさま次の捕食に移るため、私たちの目には周回だけしているように映ります。

 

 境川遊水地公園で羽根休めしている旅鳥の「クロハラアジサシ(黒腹鯵刺)」ですが、一羽単独での立ち寄りでした。池面は「菱」が枯れずに浮いていて見つけ難いと思うのですが、僅かな隙間から顔を出した小魚を探知し、一瞬のうちに獲物をゲットし呑み込んでしまいます。ダイブして水中に潜ったり、クチバシですくいあげたりした後、直ぐに飛翔に入りクチバシに獲物が残っていないため、私たちの目で採餌活動を目に留めることは難しそうです。遊水地には獲物が豊富、栄養を蓄え越冬地に向けて元気に旅立って欲しいものです。

 

注)   ☆印は、Webウィキペディアのクロハラアジサシの解説を参照し、一部引用させて頂きました。

撮影場所;神奈川県横浜市泉区下飯田 今田遊水地

撮影日;2021.10.25