境川の今田遊水地は年々葦原が定着し、冬鳥のオカヨシガモやマガモに住む場所が得られ、夏場繁茂した沢山の「菱」を餌にして、越冬には格好の楽園。

 11月も半ばを過ぎ、冬鳥たちが続々と押し寄せて来て野鳥撮影家たちを楽しませてくれています。前回のブログでは、10月の末に到着したヨシガモやハシビロガモを取り上げましたが、同じ時期に到着しているオカヨシガモや今月に入ってから到着したマガモについて紹介します。

 

 今田遊水地は、境川遊水地公園の一つで令和元年に開園され、今年で3年目になります。敷地全体が運動広場として市民一人一人が自由に活用できるように解放されています。勿論、その目的は境川の氾濫に備えるためのもので、今年の秋口には大雨で危険水位に達した境川の水が引き込まれ、一面が水没する状態も見てきました。この遊水地も3年が経過し、池には葦原が定着し、夏には池面全体を覆うように「菱」が蔓延りますが、冬を迎えるころには枯れてきて池面が見えるようになります。実は、この「菱」の茎や葉は、野鳥の鴨たちにとって格好の餌になり越冬する鳥たちの食糧になっているのです。水面には出ていませんが、水中下は菱の茎や葉が埋没しており、天然の備蓄庫の役割を果たしているのです。

 

 3年目を迎えた今田遊水地には、ふんだんにある食糧を目当てに沢山の冬鳥たちの渡来が定着してきました。管理人が野鳥撮影を始めた頃には撮影できなかった、ナポレオンハットのヨシガモやオカヨシガモも見られるようになりました。また今回取り上げる、日本には少数しか飛来してこないと言う「オカヨシガモ(丘葦鴨)」も、群れで確認しています。「マガモ(真鴨)」は、二組のカップルを確認できました。

 

 オカヨシガモ(丘葦鴨)」は、北アメリカ大陸北部、ヨーロッパ北部などで繁殖し、冬季はアフリカ大陸北部、ヨーロッパ南部、インド、中国などに南下して越冬します。日本には亜種のオカヨシガモ(丘葦鴨)」が、冬季に越冬のため少数が飛来します(☆)。今田遊水地に渡来している「オカヨシガモ(丘葦鴨)」は、幾つかのカップルが群れで行動していました。餌となる「菱」の茎や葉は水中に沈んでいるため頭を水に潜らせ、倒立状態でお尻を高く上げながら採餌を繰り返していました。

 

 「オカヨシガモ(丘葦鴨)」は、全長が46~56センチメートル、翼開長は84~95センチメートルになります。足の色は、橙色若しくは燈黄色です。冬鳥たちの多くは、春の繁殖期を前にメスにアピールするため綺麗な羽毛に置き換わりますが、「オカヨシガモ(丘葦鴨)」は、大変地味な色です。今田遊水地に渡来している「オカヨシガモ(丘葦鴨)」も繁殖色で、三組くらいのカップルができており、それぞれが並んで泳いでいました。クチバシの黒い方がオス、橙色に黒い斑紋を持つ方がメスです。食性は植物食で、種子、茎、葉などの他、昆虫などを食べます。

 

 「マガモ(真鴨)」は、北半球の冷帯から温帯に広く分布します。北方で繁殖した個体は、南方へ渡り越冬します。日本には、亜種の「マガモ(真鴨)」が、冬鳥として北海道から南西諸島まで全国的に渡来します(☆)。北海道や本州中部の山地では少数が繁殖をしているとのことです(☆)。今田遊水地では、二組の「マガモ(真鴨)」カップルを確認しました。冬鳥たちは、繁殖を前に綺麗な繁殖色に変わっており、オスの「マガモ(真鴨)」は陽の光を受け綺麗な緑色の頭をしていました。

 

 「マガモ(真鴨)」は、オカヨシガモよりも大きく、50~65センチメートル、翼開長は75~100センチメートルです(☆)。今田遊水地で越冬する二組のカップルは、繁殖期のオスとメスで写真に示すとおり、オスは黄色のクチバシと緑色の頭で首に白い首輪があり、灰白色と黒褐色の胴体で鮮やかな体色をしています。対してメスは、橙色と黒色のクチバシで、ほぼ全身が黒褐色の地に黄褐色の縁取りの羽毛で覆われ地味な彩色をしています。湖沼や河川、海岸などが生息域で、食性は植物食で雑食です。

 

 現在、今田遊水地で越冬している鴨たちも、それぞれの種類が固まり、棲み分けされているように見えます。池は今田遊水地のほかに俣野遊水地や下飯田遊水地が近くにあり、野鳥たちは三か所の池を移動して摩擦の回避に努めているようです。これから春までの半年間元気に過ごし、繁殖地に向けて旅立って欲しいと願っています。

 

注)   ☆印は、Webウィキペディアからオカヨシガモとマガモの解説を参照し、一部を引用しています。

遊水地で越冬する「オカヨシガモ(丘葦鴨)」のカップル

越冬のため渡来した「マガモ(真鴨)」のカップル

撮影場所;横浜市泉区下飯田 今田遊水地

撮影日;2021.11.17