カムチャッカ半島方面から飛来したのか、冬鳥の「ユリカモメ(百合鴎)」の群れ。温暖な長井漁港周辺は餌となる小魚が豊富、越冬仲間のウミアイサたちと共同して空の上から追い込み漁を助っ人。

 12月に入り、冬鳥たちの渡来も順調に進んでいます。先日は諏訪湖方面に飛来している「カワアイサ(川秋沙)」や「ミコアイサ(巫女秋沙)」を紹介しました。今回は、海に渡来している冬鳥の観察をするため、久々に横須賀市の長井漁港周辺の海岸を訪ねました。この漁港は西海岸に位置するため、太陽を背にして朝から昼まで順光での撮影が期待できます。

 

 三浦半島の西海岸側は相模湾に面し、付近の荒崎海岸にも象徴されるように岩場が多く、東京湾側の東海岸よりやや波が荒い感じがします。長井漁港周辺はその延長線上にあり岩場が多く、干潮時には剥き出しの岩肌を見ることができます。この時期、漁港周辺には冬鳥の「ユリカモメ(百合鴎)」が群れで越冬をしています。「ユリカモメ(百合鴎)」の群れは、漁を終えて帰港する漁船を見つけては上空を飛び交い歓迎ムードになります。カモメたちは小さな小魚を漁師から貰えるのを期待しているのです。

 

 日本にやって来る「ユリカモメ(百合鴎)」は、ロシア方面のカムチャツカ半島からやって来る個体が多いとのことです。白鳥などと同じように3,000Kmの長距離移動をしているとのことです。和名の「ユリカモメ(百合鴎)」は、入り江に多くいることから、「入り江カモメ」が「イリカモメ」に転じ、「ユリカモメ」になったとの説です。「ユリ」の漢字の百合は当て字で、百合の様に白いことから名付けられたとのことです。

 

 「ユリカモメ(百合鴎)」の世界的な分布は、ユーラシア大陸北部やイギリス、アイスランドなどで繁殖し、冬は南下し、ヨーロッパ、アフリカ、インド、東南アジアなどへ渡り越冬します。一部には北アメリカ東海岸に渡る個体もいます。日本には冬鳥として北海道から南西諸島まで、全国的に海岸や河川、沼地などに広く渡来してきます(☆)。北海道では厳冬期には殆ど見られなくなるとのことです。「ユリカモメ(百合鴎)」は、国際自然保護連合(IUCN)で軽度懸念に指定されています。

 

 全長は、約40センチメートル、翼開長は約93センチメートルあります。足とクチバシは赤色をしています。夏羽と冬羽があり、夏羽は頭部が黒褐色になります。冬羽は、頭部が白く目の後ろに斑点が入ります。夏羽は、ズグロカモメに似ていますが、クチバシが黒いので判別がつきます(☆)。

 

 海岸や内陸の湖沼、河川に群れを作り生活します。大きな河川では河口から10キロメートル以上も遡り行き来し、夜は海に戻りイカダ等の上で休みます(☆)。漁港周辺の「ユリカモメ(百合鴎)」たちは、停泊している漁船や建物の屋根などで休んでいるのを観察できます。

 

 「ユリカモメ(百合鴎)」の群れは、漁港周辺の海域でも見られます。最初、何が起きているか分からなかったのですが、カモメが飛んでいる真下の海面を見ると、同じ越冬仲間の「ウミアイサ(海秋沙)」の群れが見えます。「ウミアイサ(海秋沙)」たちは、岩場に小魚を追い詰める「追い込み漁」をしているのです。漁をしている「ウミアイサ(海秋沙)」の数は、18羽はいたでしょうか。18羽は、潜る組と海面組の二手に分かれ、小魚の群れを追い詰めます。「ユリカモメ(百合鴎)」の役割は、浮いてきた小魚を探知するとその方向に移動し、「ウミアイサ(海秋沙)」に知らせている様なのです。「ユリカモメ(百合鴎)」と「ウミアイサ(海秋沙)」は、空と海の両面から小魚たちを岩場に追い詰め、潜水組からの攻撃で浮上してくる小魚を一網打尽に捕獲しているのです。空と海の共同作戦は、漁師顔負けの見事な狩りといえましょうか。

 

注)    ☆印は、Webウィキペディアのユリカモメの解説を参照し、一部引用させて頂きました。

 

撮影場所;横須賀市 長井漁港

撮影日;2021.12.07