遠い北国から気候温暖な湘南の海に「アビ(阿比)」の夫婦 ?が2羽、仲良く越冬中。得意の潜水力で小魚を追いかけて必殺ゲット。

 コロナ感染症の新変異株であるオミクロンの勢いが止まりません。管理人の住む神奈川県にも感染拡大を阻止するため「まん延防止等重点措置」が発出されました。感染のピークを9万人前後と予想する専門家もいましたが現実のものとなってきています。一人一人が、極力密を避け、マスク、手洗いの徹底など一層の注意を払って行かなければなりません。

 

 感染症拡大の話題はともかく、野鳥の世界は季節と共に確実に推移をしてきています。1月も終わりに近づき、日本で越冬する渡り鳥もやっと落ち着きを見せてきました。撮りためた野鳥の写真を整理していると、野鳥撮影の先輩から情報が届き、「アビ」を撮影に湘南の海を訪ねました。埼玉県越谷市出身の「阿炎・あび」という相撲力士もいますが、野鳥のアビは、ではなくと書く「阿比」です。「アビ(阿比)」という野鳥は人との関わりが深く、広島県の瀬戸内海沿岸の豊島や斎島(いつきしま)地域では、冬鳥として渡来するアビを用いて「あび漁」が行われてきたそうです。野鳥を使った伝統漁法で300年前に遡る、江戸時代の元禄や寛永に始まっています(☆)。人が野鳥を操り、目的の魚を直接捕らえる長良川の鵜漁とは違い、アビ漁はアビの群れを自由な状態にして、アビの好きなイカナゴの群れを追わせ、取り囲ませることによりイカナゴを海中に逃げ出させます。このイカナゴを狙って、普段は海底にいる高級魚の真鯛やスズキが浮上して来るところを漁師が1本釣りで釣り上げる二段作戦なのです(☆)。鵜漁は、鵜が捕まえた獲物を横取りするのて後ろめたさを感じますが、アビ漁はアビと人がウィンウィンの関係にあり紳士的で、野鳥と魚の習性を見抜いたスマート漁法と言えます。

 

 アビと言う名前の由来についてですが、これといった納得いくものはありません。Webウィキペディアのアビの解説では、アビの水かきに着目して「ろ(足広)」や「れ(足鰭)」が次第に訛っていき、アビに転じたという説が共感を覚えました。広島県の県鳥(昭和39年)に指定されている「アビ(阿比)」ですが、昭和初期には数万羽が渡来していたそうです。残念ながら現在は、「アビ(阿比)」の好物のイカナゴが減少し、飛来は年々減少傾向にあるとのことです。広島県では、アビの渡来する冬季を鳥獣保護期間として、斎島(いつきしま)周辺の海域をレジャー船の航行を禁止するなどしてアビの保護に取り組んでいます。

 

 「アビ(阿比)」は、北アメリカ大陸北部やユーラシア大陸北部で繁殖し、冬季になると越冬のため北大西洋や北太平洋の沿岸部に南下してきます(☆)。日本には、冬季に越冬のため九州以北に飛来してきます(☆)。湘南の海にやって来た「アビ(阿比)」は、二羽確認でき、形や色が違うのでカップルなのかも知れません。フレンドリーな面があり、人を見ても怖がりません。「アビ(阿比)」の全長は、63センチメートル、翼を広げると109~116センチメートルになります。背面は灰黒褐色の羽毛で覆われています。夏羽と冬羽があり、夏羽は頭部が灰褐色、首は赤褐色の羽毛で覆われます。虹彩は赤色、クチバシはやや上向きに反っているように見えます。冬羽は額から後頭にかけて黒褐色、喉から腹部にかけて白い羽毛で覆われます。生息エリアは海岸で、食性は動物食、魚類を捕食します(☆)。

 

 「アビ(阿比)」の保護活動は、最近になってからとのことです。野鳥の生態系を守ることは私たち人間の環境を維持することにもつながりますので、広島県の取り組みが功を奏することを願っています。相撲界の阿炎にも躍進を続けて行って欲しいものです。管理人の個人記録ですが、「アビ(阿比)」の撮影は258番目の野鳥になりました。

 

注)    ☆印は、Webウィキペディアのアビの解説を参照し、一部引用しています。アビの保護活動は、広島県のホームページを参考にしました。

撮影場所;神奈川県 湘南海岸

撮影日;2022.1.26