今田遊水地の葦原は、冬鳥の「オオジュリン(大寿林)」が群れで越冬。ジュリーンと鳴き交わす群れの一部が枯れた葦に舞い降り、おちょぼ口でバリバリ鞘を剥いで、大好きな子虫をゲット。

 横浜市泉区の今田遊水地を訪ねました。この遊水地は、令和元年(2019年)、境川の氾濫に備えるための施設として開設されました。施設の半分以上をビオトープにして生物や野鳥などが棲めるよう葦や蒲などが植栽され、開設から4年を経て葦原として定着しています。この葦原には、今年も冬鳥の「オオジュリン(大寿林)」が群れで来てくれました。

 

 今田遊水地のビオトープは、生物や野鳥の棲みやすい環境にしようと設計段階から葦原の配置が考慮されています。開設から4年が経ち、目論見どおり葦原には多くの野鳥がやってくるようになりました。特に冬季は、珍しい水鳥もやってきて多くの野鳥撮影家たちを楽しませてくれています。葦原は、水路で区切られているため人や犬などが入れず野鳥にとっては安心です。それと豊富な食べ物があることが大きな魅力になっています。池の底には夏場繁った菱が沈んでおり、水鳥たちの格好の餌になっています。また、枯れた葦原は、野鳥が身を隠すのに好都合なばかりでなく、葦の鞘の中に子虫がおり、野鳥たちの餌場として引き寄せているのです。

 

 「オオジュリン(大寿林)」は、下流に当たる俣野遊水地にも渡来していますが、逆光となり撮影が難しく今田遊水地の方がお勧めです。この時期は、枯れた葦の中に子虫が付いており、それを狙ってシジュウカラやスズメ、メジロなどが確認できます。「オオジュリン(大寿林)」の今田遊水地等への渡来は、すっかり定着したようです。一見、スズメと同じくらいの大きさなので間違えてしまいますが、葦の梢に止まり、おちょぼ口でパチパチとさやを剥がしていれば、「オオジュリン(大寿林)」で間違いありません。飛翔する時には群れになり、白い腹が見えますので分かり易いと思います。

 

 「オオジュリン(大寿林)」の世界的な分布は、アフリカ大陸北部やユーラシア大陸、日本などに広く分布します。夏季はユーラシア大陸の高緯度地方で繁殖し、冬季はアフリカ大陸北部やユーラシア大陸南部へ南下して越冬します。日本では亜種オオジュリンが夏季に北海道と東北地方で繁殖し、冬季は本州以南南下して越冬します(☆)。

 

 全長は、14.5センチメートルでスズメと同じくらいの大きさで、翼は赤褐色の羽毛で覆われ、黒い縦縞状の斑紋が入ります。オスの冬羽の頭部は赤褐色で、夏羽になると喉元からにかけて黒くなります。黒くなるのは生え変わるからではなく、冬羽の赤褐色の部分が摩耗し、内側の黒い部分が現れて来ることによるものです。クチバシ基部から頬へ向かう斑紋(頬線)は白い色です。オスの冬羽はメスに似ていますが、喉を黒い斑紋で囲まれています。メスは頭頂部と頬が褐色、目の上の眉状の斑紋は黄褐色をしています。

 

 

 「オオジュリン(大寿林)」の生態は、河川や湖沼周辺の草原や湿原等に生息しており、秋季や冬季の渡りの時期は、群れを形成します。食性は雑食で種子、昆虫類を食べ、葦等の梢に縦に止まり、鞘の皮を剥がして中にいる昆虫類を捕食します(☆)。オオジュリンの名前の由来は、「チュイーン、ジュリーン」と鳴くことから、鳴き声を名前にしています。

 

 3~4年前、今田遊水地より下流の境川遊水地公園の葦原に、オオジュリンに交じってシベリアジュリンが渡来したことがあり、多くの野鳥観察家たちを楽しませてくれました。シベリアジュリンは、姿・形ともオオジュリンに似ていますが、クチバシの形状に特徴があります。オオジュリンはおちょぽ口で丸みのあるクチバシですが、シベリアジュリンは直線的で閉じた時三角形をしたクチバシになります。

 

注)  ☆印は、Webウィキペディアのオオジュリンの解説を参照し、一部引用しています。

撮影場所;横浜市泉区下飯田 今田遊水地

撮影日;2022.2.12