日向渓谷の渓流では、今年も新たな命の誕生の予感。滝の流れに逆らい突入する「カワガラス(河烏)」の親が、クチバシに頬張り切れない昆虫を咥え、頻繁に運ぶのを確認。

 18都道府県に発出されていた新型コロナ感染症の「まん延防止等重点措置」は、3月21日で全面解除されることになりました。いみじくも昨年の同時期は、感染拡大の第3波が落ち着き、緊急事態宣言の解除がありました。緊急から重点措置への移行とこの病気と向き合う対応策が、確実に一つずつ前進している様な気がします。

 

 今日は、河津桜の開花を見て森の中で越冬する冬鳥の撮影に日向林道を訪ねました。日向林道は丹沢大山方面の登山道の入り口がありハイカーたちの人気のスポットになっています。来訪者のために大きな駐車場が用意されており、ハイカーは早朝、薄暗いうちから出発する方もいるようです。例年この時期はウソやマヒワなどを見ることができるのですが、残念ながら今年は見当たりませんでした。林道を歩いていても野鳥の鳴き声は少なく、時折りウグイスの鳴き声だけが響き渡り春が感じられました。この冬の寒波は長かったこともあり、春の芽吹きはこれからのようです。また、この時期は日向川の「カワガラス(河烏)」の繁殖が気になりそちらを確認することにしました。

 

 日向川の上流には伊勢原市の「ふれあいの森日向キャンプ場」があり、山の中腹に貸し出し用の山小屋があります。この間の川の流れは落差が大きく途中に人口の滝が造られています。カワガラスは人口の滝の裏側に営巣しているのです。カワガラスの主食は水生昆虫等で水に潜ったり浮かんだりすることが得意です。水に潜る時は、目を保護するため「瞬膜」と言って白い膜で覆い、いわゆる白目になり保護します。羽根も水をはじき返す成分で保護されています。そんな訳で、カワガラスの滝潜りはそれほど難しい行為ではなく、人間の目では強い水量と思われる場所でもカワガラスは水量の少ない場所を選んで潜り抜けています。

 

 「カワガラス(河烏)」は、日本では留鳥で北海道から本州まで広く分布しどこでも見られる野鳥です。世界的には、ヒマラヤ北部からインドシナ半島北部、中国、台湾、サハリン、日本、カムチャッカ半島に分布しています。全長が21~23センチメートルで、ツクミやヒヨドリよりも少し小さめです。全身がカラスの様に黒く、川にいることからカワガラスの名がついています(☆)。

 

 今回、「カワガラス(河烏)」の親がクチバシ一杯に餌を頬張り、滝に向かって羽ばたき潜り抜けるのを頻繁に確認しており、餌の運び具合から雛は相当成長していると思われました。孵化してから約3週間(孵化して21~23日後)くらいで巣立ちの予定で、例年だと桜の開花時期と同時期に雛の巣立ちを見ることができます(☆)。野鳥撮影家たちにとっては「春の風物詩」ともいえる、「カワガラス(河烏)」の雛巣立ち、これからが楽しみです。

 

注)     ☆印は、Webウィキペディアのカワガラスの解説から雛から巣立ちまでの期間を参照しました。 

撮影場所;神奈川県伊勢原市 日向渓谷日向川

撮影日;2022.3.16