去年の秋から越冬のため訪れている、今田遊水地の水鳥たち。暖かい春を迎えて旅立ちはもう直ぐ。恋人もでき羽毛は婚姻色に美しく変身。栄養を沢山補給して渡りに備え、秋には子連れで元気な姿で戻っておいで!!

 今日、3月21日から18都道府県に出されていた、まん延防止重点措置が解除されました。折しも、関東地方では気象庁から桜の開花宣言が出されましたが、残念ながら今年もお花見の行事は控えめにしなければならないようです。新規感染者数の減少は見られているものの、専門家の間では決して安心はできないとの見方です。

 

 葦原に覆われる今田遊水地(※一時池のこと、以降同)は野鳥の楽園として、先月の13日に冬鳥として越冬する「オオジュリン(大寿林)」を紹介しました。それから一か月が過ぎましたが、遊水地の葦原はすっかり枯れ、折れた梢が目立つようになりました。先月訪ねた時は、梢の皮を剥がす音がバリバリ聞こえていたのにその面影はありません。「オオジュリン(大寿林)」の姿は見当たらず、早くも北国へ旅立ったようです。枯れ葦が通路側に来ないように設けられた畔には、「セッカ(雪加)」が元気に歩き回って存在感を示していました。3羽くらいを確認しましたが、その中の一羽は人を怖れず人前にも平気で顔を出してくれます。「セッカ(雪加)」は、13センチメートルとスズメよりも小さく、枝へも両足を踏ん張るように止まる、セッカ止まりが良く知られています。畔にはセッカの好物があるらしく、時折り立ち止まっては土の中にクチバシを差し入れ、捕食していました。

 

 遊水地の水鳥たちは、オカヨシガモやコガモそしてヨシガモにハシビロガモの群れを昨年の10月下旬ころから確認しています。到着していた時分は、オス同士、メス同士で行動していたのに、春を迎え繁殖を前にして、それぞれのカモたちはペアができ上がっていました。ヨシガモは三組、ハシビロガモが二組確認でき、オカヨシガモは数が多く、4~5組以上のペアが出来上がっています。なお、ハシビロガモのオスで換羽が十分できていない個体もいるようでした。観察していると、ペアになっている組は、オスが休んでいてもメスの行動が気になるらしく、メスが泳ぐとすかさず寄り添うようにオスが追いかけているのを確認しました。

 

 遊水地のほぼ中央には大きな島があり、そこは葦で覆われカモたちの安息の場所になっています。また、カモたちは群れを作っていて縄張りができており休む場所が決まっているようです。オカヨシガモやコガモは、相鉄線や市営地下鉄のある川の上流側、ハシビロガモはそれよりやや下流側、ヨシガモは取水口に近い下流側に陣取り、それぞれの縄張りが決まっているようです。日中は首を丸めて寝ていますが、常に警戒心は怠らず、時折り目を開けては辺りを警戒します。待っていると必ず泳ぎますので、泳ぐ写真を撮影するためには待つと言う時間が必要です。カモの写真は忍耐ですね。オカヨシガモは採餌に余念がないので、比較的楽に撮影できます。

 

 今田遊水地では、オカヨシガモやヨシガモ、ハシビロガモ、コガモなど4種のカモたちが越冬しており、暖かい春を迎えて3月の終りから4月の初めには繁殖地に渡っていくことになります。オカヨシガモやハシビロガモの繁殖地は、北アメリカ大陸の北部やシベリア、そしてユーラシア大陸などで、高緯度から中緯度地域の夏でも気温が低い地域です。ヨシガモは、中国北東部やモンゴル、ウスリー、シベリアなどが繁殖地になっており、どこから渡来したのか気になりますね。環境省では、平成23年(2011年)に代表的な渡り鳥であるオオハクチョウやコハクチョウ、オナガガモの3種について、鳥類の飛来経路や移動状況の調査(鳥類標識調査)を行っています(☆)。オオハクチョウやコハクチョウの出発地は北海道と宮城県から、オナカガモは千葉県からとそれぞれの立ち寄り先と経路をGPSを使って克明に調査したものです。今田遊水地で越冬するカモたちは含まれていないので何とも言えませんが、それぞれのカモたちは、シベリア方面から渡来したものと推測できます。渡りをする野鳥は生まれた場所と生活の場の二か所を行き来していることになり、それぞれの渡り鳥の飛来経路や移動状況が判ると野鳥観察もより楽しくなるかも知れません。 

 

 繁殖期を前にしたカモたちは、特にオスはメスへ求愛を示すため到着したてとは異なり、いわゆる婚姻色に大変身します。顕著なのはヨシガモのオスで、頭部の茶褐色と目から頭部の緑色がより鮮明となり、英名(falcata)にもなっている三列風切りが鎌の様に湾曲して垂れ下がり、水面に付くまで大きくなります。また、ヨシガモの特徴である頭部はナポレオンハットと呼ばれる、帽子を被ったような頭となり、胸の黒い斑紋もはっきりしてきます。クチバシが大きく広いことで知られるハシビロガモのオスも同様です。エクリプスは、頭部が灰黒色をしていますが成長すると光沢のある暗緑色となり、体側面から腹部にかけて赤褐色が鮮明となり、胸や腹、尾羽の白色と尾羽基部の黒色が対比してより鮮やかさを増してきます。オカヨシガモのオスも婚姻色になり、頭部の羽衣が褐色や灰褐色になり黒い斑点が入るほか体側面の風切り羽も鮮明になります。全体的にヨシガモやハシビロガモに比べて地味な色彩です。

 

 今田遊水地のカモたちは、繁殖期を前にしてメスへのアピールをするため、美しく変身を遂げました。暖かい春になり、北国への旅立ちはもう直ぐです。長旅を乗り切れるように栄養を沢山つけ、今年の秋には沢山の子供を連れてまた戻ってきて欲しいと願っています。

 

注)    ☆印は、Web「環境省によるオオハクチョウ、コハクチョウ及びオナガガモの鳥類飛来経路や移動状況」調査結果(2011年・平成23年)を参照しています。

 

撮影場所;横浜市泉区下飯田 今田遊水地  (順に、ヨシガモ2、コガモ2、オカヨシガモ2、ハシビロガモ2、セッカ2  )

撮影日;2022.3.20

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コメント: 1
  • #1

    十兵衛 (金曜日, 01 4月 2022 10:52)

    ヨシガモ君綺麗です。