平地の山林や公園では冬鳥として親しむ「ウソ」や「ルリビタキ」達。実は、春夏に涼しい高山帯で繁殖活動を展開。富士山五合目、奥庭自然園・「奥庭荘」の水飲み場には二世と共にやって来て健在ぶりをアピール。

 夏の野鳥観察は、囀りは間近で聞こえているのに枝葉の陰などに隠れ、なかなか姿を見せず思うように撮影させてもらえないことが度々あります。そんな時のとっておきの裏ワザが水飲み場の撮影です。先日は、夏鳥の撮影に秦野市権現山のバードサンクチュアリを訪ねましたが、今回は「涼」も兼ねて富士山五合目の奥庭自然園に遠征しました。

 

 奥庭自然園は、富士山五合目の手前にあり大きな駐車場が用意されています。今回紹介するのは、野鳥撮影家なら知らない人はいない、富士山にある人口の水飲み場です。奥庭自然園の中には、富士山登山のハイカーたちの宿として、「奥庭荘」という名前の山小屋があります。この山小屋の管理人は、宿の提供と併せて人口の水飲み場を設え、野鳥たちに恵みの水を提供しているのです。富士山周辺は砂礫層で出来ており、雨が降っても直ぐに浸透してしまい溜まる場所がなく、水はとても貴重な存在です。野鳥たちからすれば、まさに砂漠の中のオアシス的存在なのです。普段は、私たちが野鳥を探し回らなければならないのに、野鳥の方から顔を出してくれるのですからこんな効率的な野鳥撮影方法はありません。この人気のスポット、海外にも知れ渡っているようで、台湾や韓国の野鳥愛好家たちが泊まり込みで来ていました。管理人が到着した時は既に撮影場所がなくなる程の人気ぶりです。

 

 奥庭荘の水飲み場には何回か通っていますが、親子連れでやって来るウソやルリビタキを観察したのは初めてです。幼鳥との出会いはタイミングが関係してきますので、大変ラッキーでした。今回確認した野鳥は、出没頻度順にウソ、ルリビタキ、ヒガラ、メボソムシクイ、キクイタダキ、コガラ、カヤクグリ、※エナガ、ホシガラスの順でした。コガラ以降は、管理人が観察した中では、一回現れただけです。※エナガは、管理人が食事中に大きな群れで現れ、撮影はできていません。ウソやルリビタキは、街中で暮らしている私たちには冬鳥で、最初観察した時にどうして冬鳥がこんなところにと思ったものですが、良く考えて見れば繁殖地は亜高山帯や高山帯なのですから普通なのですネ。ウソの幼鳥を目にするのは初めてでしたので、胸周りが茶色のこの鳥が現れた時、新種の鳥かとシャッターを切りまくってしまいました。親鳥のウソが現れ、仲良く水浴びをする姿を見てやっと親子なのだと納得しました。

 

 続いての親子連れで現れたのが、ルリビタキです。冬、私たちの前に瑠璃色の貴公子として楽しませてくれる野鳥ですので、その色から直ぐ判別がつきます。ルリビタキの幼鳥は、メスの成鳥とほぼ同じ風貌ですが、違うのは胸周りの黒い斑紋です。尾羽が青いのでルリビタキの幼鳥と判別がつきますが、オスとメスの区別がはっきりしません。ただ確認した中に、翼の一部に瑠璃色の混じる個体がおり、これがオスの幼鳥ではないかと推測しています。 水飲み場に現れるルリビタキは、幾つかの群れが同時にやって来て水飲み場を占拠するので、撮影はどの個体を撮るか絞るのに大変でした。成鳥オスが複数いるので複数の親子連れと判断しましたが、連れ立ってくるのはお互いの営巣場所が近いのでしょうか。ルリビタキの複数の親子連れを初めて観察できました。観察した幼鳥の中には青虫を咥えた個体がおり、誇らしげに咥えた青虫を見せてくれます。直ぐ食べてしまうのかと思うとそうではなく、しばらく青虫を咥え、初の捕り物を楽しむ様にそちこち動き回っていました。

 

  富士山五合目付近の奥庭自然園は、「富士スバルライン」の途中にあり大きな駐車場が用意されています。自然園には駐車場から急な石畳みの坂道を10分位下りたところに奥庭荘があります。奥庭荘は、富士登山をするハイカーや野鳥撮影家たちの宿泊施設として利用されています。野鳥の水飲み場は、建物脇のコメツガなどの林の中に溶け込む様に造られており

、野鳥たちにストレスを与えることはなさそうです。この水飲み場では、野鳥の中でも最小の「キクイタダキ」や高山帯でしか見ることのできない「ホシガラス」の撮影ができます。この奥庭荘、宿泊施設だけでなくレストランや土産物売り場があり、簡単な食事もできます。機会を捉え、是非、高山帯の野鳥撮影に遠征されることをお勧めします。

水飲み場に来た、「ウソ」の親子

水飲み場に来た、ルリビタキの親子

 

撮影場所;山梨県富士河口湖町大嵐 奥庭自然園 奥庭荘

撮影日時;2022.6.27