三万平方メートルの馬入ふれあい公園の草原では、留鳥の「ヒバリ(雲雀)」が春から抱卵を始めたか ? 先月孵(かえ)った雛たちが初夏を前に大きく成長。広い草原で親鳥と一緒にホバリングの練習。

 今年のNHK大河ドラマは「鎌倉殿の十三人」ですが、馬入ふれあい公園の馬入の名は、主人公の源頼朝にまつわります。相模川の河口に架けられた橋の渡り初めに頼朝が招かれ、その時、乗っていた頼朝の馬が突然暴れ出し川に入り込んだことから、この辺りの相模川を馬入川と呼ぶようになったそうです。橋の名は馬入橋、ドラマは少し変えていますね。

 

 馬入ふれあい公園は馬入橋の一角にあり、三万平方メートルの河原に春はポピー、秋はダリヤやコスモス畑と色とりどりの花が植えられ、癒しの空間は来訪者を楽しませてくれています。野鳥の撮影では、秋に差し掛かる頃、渡りのノビタキがこの公園に立ち寄り、コスモスの花に止まるノビタキの写真が撮れることから人気のスポットになっています。公園の畑は、相模川の流れに並行して配置され、時に台風や大雨で溢水することも度々です。春の花のポピーが終わると、畑には何もない草原状態となり、広大な草原は留鳥の「ヒバリ(雲雀)」が営巣場所として独占しています。馬入ふれあい公園では、相模川にやって来る水鳥の撮影もできます。相模川の岸辺に川の様子を観察できるよう踊り場が設置されており、ここからは中州の干潟にやってくる水鳥が観察できるのです。残念ながらこの日は、山沿いで雨が多く降ったのか水かさが増し干潟が見えなくなっていました。

 

 訪ねた時、広い草原の一角では、成長して幼鳥となった「ヒバリ(雲雀)」の家族が、ホバリングとサエズリの訓練をしていました。親鳥が子供に伝授する内容は様々ですが、成長した4羽の雛が繰り返しホバリングの練習をしており、親鳥らしき個体が見本を示していました。姿形は成鳥に近いのですが、まだ羽ばたきが続かず直ぐ舞い降りてきてしまいます。春の鳥として親しまれている「ヒバリ(雲雀)」ですが、古来から人の目に触れることが多く、詩歌でも春の季語として使われ、告天使(こうてんし)、叫天使(ぎょうてんし)、天雀(てんじゃく)など多くの呼び名があります。「ヒバリ(雲雀)」の和名は、晴れた日(日晴り・ひばり)に囀る野鳥に由来するとのことです(☆)。「ひばり」と言えば、歌謡界の女王、(故)美空ひばりさんの名前は、晴れた日の田圃で、「ヒバリ」が美しい声で鳴いていたそうで、これを名前にしたそうです。

 

 「ヒバリ(雲雀)」は、スズメ目、ヒバリ科に分類され、世界的にはアフリカ大陸北部やユーラシア大陸、イギリス、日本などに分布しています。日本では亜種のヒバリが周年生息(留鳥)し、亜種カラフトチュウヒバリや亜種オオヒバリが冬季に越冬のため本州以南に冬鳥として飛来します(☆)。全長は17センチメートル、翼開長は32センチメートルで、後頭の羽毛は伸長(冠羽)します。上面の羽衣は褐色、羽軸に黒褐色の斑紋が入ります。下面の羽衣は白く、首の横から胸部にかけて黒褐色の縦縞紋が入り、胸部から体側面は褐色、外側尾羽は白く初列風切りは長く突出、クチバシは黄褐色、先端が黒く足はピンクがかった褐色をしています(☆)。

 

 「ヒバリ(雲雀)」の生息場所は、草原や河原、農耕地などです。東京都ではヒバリの生息場所がなくなり、絶滅危惧種に指定しているとか。食性は、植物食傾向の強い雑食で主に種子を食べ、昆虫やクモなども食べます。セッカなどと同じように上空を長時間、滞空飛翔(ホバリング)をしたり、草や石の上などに乗り、止まりながら囀ることもあります。繁殖期のオスは、縄張り宣言行動として高く上がって行くことを、「揚げ雲雀」と呼んでいます。巣作りは簡単で、地表に窪みを作り植物の葉や根を組み合わせお椀上の巣をメスが造り、3から5個の卵を産みます。抱卵は、11から12日、ヒナは孵化してから9から10日で巣立ちます。繁殖期は、つがいで行動し、非繁殖期は小さな群れで行動します(☆)。

 

 「ヒバリ(雲雀)」の撮影は、他の野鳥のように枝に止まることはなく、空の上で舞っている状態から畑や草原など地上に降り立つ時を狙うしか手立てはありません。近くでの撮影は難易度が高いと言えます。営巣場所の目星が付けば、ヒナへの給餌の際にあるいは今回の様な飛翔訓練に出会えれば近寄って撮影はできそうです。馬入ふれあい公園の「ヒバリ(雲雀)」は周年生息しており、比較的に餌の少ない冬季は、耕された畑地の中を歩いていることが多く、撮り易いかも知れません。

 

注)  ☆印は、Webウイキペディアの「ヒバリ」の解説を参照し、一部引用させて頂いています。 

撮影場所;神奈川県平塚市中堂 馬入ふれあい公園

撮影日;2022.7.05