今期も秦野の権現山に元気に到着した旅鳥の「エゾビタキ(蝦夷鶲)」たち。雨上がりの翌日は、サンクチュアリの水飲み場をスルー。雨水で臨時にできた屋根上の水飲み場が大盛況。

 最近、権現山の水飲み場は野鳥愛好家の人気のスポットに定着し、渡りのこの時期は夏鳥たちと旅鳥の「エゾビタキ(蝦夷鶲)」の水飲みシーンが両方撮れるとあって大盛況です。数少ない観察窓は直ぐに埋まってしまうので、この日も少し早起きをして現地を訪ねて見ました。

 

  私たちは、喉が渇ききった時、水を飲んだ瞬間なんとも言えない幸福を感じます。水飲み場にやってくる野鳥たちも同じで、一口飲んで顔を上げた時の幸せそうな顔は、それまで警戒を強めていた顔立ちとはまるで異なる柔和な表情を見せてくれます。権現山水飲み場は、秦野市がバードサンクチュアリーとして野鳥観察ができる施設を提供しており、野鳥たちには命の水を提供しているのです。年間の維持など施設を管理する秦野市には感謝しきれません。

 

 この日、早起きし勇んで水飲み場を訪ねましたがそんなに慌てる必要はなかったようです。前日が雨でしたので、水飲み場に来る野鳥が少なくなるのを皆さん良く知っているのです。二番手の方の到着はかなり経ってからでした。予想どおり野鳥の出も悪く、待っていてもなかなか現れてくれません。先頭を切って来たのがヤマガラとメジロ、これが何と9時少し前の到着でした。野鳥たちは、洞などに溜まった水が近くにあるのでそれで間に合わせているようです。それでも、この日は留鳥のヤマガラやメジロそしてヒヨドリの他に、夏鳥のキビタキ雌、センダイムシクイが来てくれました。結局お昼近くまで粘りましたが、エゾビタキは現れてくれませんでした。

 

 この時期のエゾビタキは群れで行動していますので、権現山の水飲み場に来なくても「喉」を潤す水場があると言うことでしょう。観察窓で隣に座った野鳥撮影家の情報では、トイレ近くの施設の屋根近くに雨水が溜まり、そこにエゾビタキが水飲みに来ていると教えてもらいました。早速目的の「エゾビタキ(蝦夷鶲)」を撮影するため移動しました。権現山の階段を降りると弘法山公園まで桜の並木になっており、エゾビタキは桜に付いている虫などを餌にしているのです。桜の先端を群れで動いており、そのうちの二羽が臨時水飲み場に来てくれました。今季は昨年に比べると個体数が少ないようです。

 

 エゾビタキは我が国には旅鳥として春と秋の渡りの時期に渡来する野鳥です。夏季にはシベリア半島、サハリン、カムチャツカ半島南部等で繁殖し、冬季はフィリピン、セレベス島、ニューギニア等に南下して越冬します(☆)。食性は動物食で昆虫類を食べ、枝先の先端に止まり、飛翔している昆虫を目掛け、ノビタキのように飛びながらの捕食もします。権現山や弘法山の頂上には桜の木など広葉樹が沢山あり、エゾビタキはこれらの枝先に付いている昆虫を飛びながら餌を捕る、フライングキャッチの光景を見ることができます。

 

 渡り鳥の渡来は、繁殖地の環境等に大きく左右されます。昨年は多かったのに今年は少なく感じました。それでも「ツィー」と言う鳴き声を聴くとエゾビタキが元気に逗留しているのが分ります。野鳥の保護は、繁殖地と生息地、そして渡りの立ち寄り先も含めてしっかり考えないといけない問題です。弘法山に立ち寄ったエゾビタキは、これから寒くなる12月の前半頃までの長逗留をしてくれます。越冬地の東南アジアは遠いので、渡りの飛翔に耐えられよう、食べ物を沢山食べ栄養を付けて来年も元気な姿を見せて欲しいものです。

 

注)   ☆印は、Webウィキペディアのエゾビタキの解説を参照し、一部引用させていただきました。 

撮影場所;神奈川県秦野市弘法山

撮影日;2022.10.11