戸隠の森には今年も忘れず旅鳥の「ムギマキ(麦播)」が途中立ち寄り。大好きなツルマサキの実は完熟に近いのに、期待の本命はなかなか姿を見せず。

 今年も昨年に続いて長野県の戸隠森林植物園を訪ねました。お目当てはキビタキによく似た、「ムギマキ(麦播)」に会うためです。「ムギマキ(麦播)」は、旅鳥のため春と秋の二回、羽根休めで途中立ち寄りのポイントでしか見ることができません。ムギマキの雄は眉班の色に特徴があり、眉班の白いのがムギマキの雄、黄色の眉班はキビタキの雄です。

 

 戸隠森林植物園には、マイカーで朝早2時に出発し、圏央道から中央高速道に入り岡谷のジャンクションから長野自動車道へ乗り換え、信濃町インターチェンジで降りる行程を選びました。ナビは関越道を選択しますが、圏央道の走行距離の長さと関越道は交通量が多いので中央高速道路の方が走り易いのです。ナビを設定しているので途中のインターチェンジやパーキングエリア、サービスエリアを案内してくれます。道中、適当にサービスエリアで休憩しながらゆっくり行きました。信濃町インターチェンジで降り、森林植物園までは一本道なので迷うこともなく朝方7時前の到着です。戸隠の森は黄葉が進み、林道沿いの林もすっかり秋の装いに様変わりしていました。車を止め窓を開けると冷気が流れ込み、一気に冬がやってきたような感じです。この時期の戸隠は厚手のジャケットが必要です。

 

 「ムギマキ(麦播)」は、スズメ目、ヒタキ科の小鳥で、冒頭紹介したように「ムギマキ(麦播)」の雄は、キビタキの雄によく似ています。違いは眉班の色が白いことです。対して雌は喉元から腹まで淡い黄色で背中は普通にオリーブ褐色をしており、目が優しく可愛く見えます。ムギマキの大きさはキビタキよりやや小さく13センチメートルです。雄は頭から背中まで黒いため、目に光が当たらないと眼の位置がはっきりしません。繁殖地は、ロシア東部からオホーツク海沿岸、サハリン、アムール、中国北東部で、冬季は中国南部、東南アジア方面に渡り越冬します(☆)。日本には旅鳥として春と秋、渡りの時期に立ち寄り、数は少ないものの日本海側でよく観察されています(☆)。ムギマキの渡りの途中立ち寄り先として、戸隠の森林植物園では毎年のように群れが確認されています。

 

 繁殖地は、針葉樹林でつがいで縄張りを持ちます。高木の枝の上に針型の巣を作り、昆虫類や節足動物を食べます(☆)。立ち寄り先ではツルマサキやゴシュユの実も食べます。戸隠森林植物の森にはツルマサキが随所にあって実をつけており、園内のツルマサキのポイントを群れで移動しているようです。例年、奥社入口の大鳥居付近にあるツルマサキに来てくれるのですが、今年はなかなか現れてくれません。管理人は近くに宿を取って三日間通いましたが、確認できたのは二日目の午前中一回限りでした。地元の女性カメラマンは雄を確認していますが、今年も管理人は雌しか確認出来ませんでした。

 

 戸隠森林植物園のツルマサキの実が熟するのはこれから。完熟すると果実の花弁が破れ実が露出しますので、ムギマキはこれに狙いを定めて取りに来るのです。実を捕るのに通常の野鳥は果実近くの枝の上に乗って採餌するのですが、ムギマキはホバリングしながらこの実を捕ることが多く、姿を確認した途端、餌を取っていなくなってしまうのです。二日目の撮影で地元のカメラマンは、採餌でホバリングする雄のムギマキを見逃しませんでした。ちなみに「ムギマキ(麦播)」の英名は、Mugimaki Flycatcherと付けられています。撮影三日目は、天候が快晴の青空となり、多くの野鳥撮影カメラマンで賑わいました。この日もキビタキとムギマキの誤認騒動があり、カメラマンの間で一喜一憂がありました。遠方の野鳥撮影で難しいのは天候判断です。秋の天候は快晴の日が多いとはいえ、台風の発生などで大きく変わってしまうことがあります。「ムギマキ(麦播)」撮影のチャレンジは、まだまだ続きそうです。

 

注) ☆印は、Webウィキペディアのムギマキの解説を参照し、一部引用させて頂きました。

撮影場所;長野県長野市戸隠 戸隠森林植物園

撮影日れ2022.10.18