夏鳥として戸隠の森にやって来た「コサメビタキ(小鮫鶲)」。夏も涼しく居心地の良い戸隠は格好の繁殖地。秋が深まりツルマサキの果実が熟れるまでの長い滞在。駆け足で冬が間近に。

 戸隠の森には、毎年旅鳥として途中立ち寄りをしてくれる「ムギマキ(麦播)」を撮影に訪れています。秋のこの時期、ツルマサキの実が完熟となり、「ムギマキ(麦播)」はこの実が大好きで越冬地に向かう途中に羽根休めをしてくれるのです。赤く熟れた果実は美味しいのでしょう、多くの野鳥がきて実を啄みます。

 

 ツルマサキの果実を目当てにやって来る野鳥の中には、今回取り上げる「コサメヒタキ(小鮫鶲)」がコゲラなど他の野鳥に交じって必ずやって来ます。余談ですが、「ムギマキ(麦播)」の♂によく似た、夏鳥のキビタキ♂が来ると、しばし撮影現場は混乱することがあります。「コサメビタキ(小鮫鶲)」も♀に似ていますが、目にアイラインがあり胸の色が白いので判別は容易です。動きが割合緩慢で、コゲラやコガラなど実を啄むと一目散に離れるのに対して控えめな行動を取るようです。標高も高く、夏でも涼しい広葉樹林の多い戸隠の森は、「コサメビタキ(小鮫鶲)」の繁殖場所に適しているのでしょう。秋も深まり、もうすぐやって来る冬を前にして心配になりますが、居心地が良いのかのんびり屋もいるようです。

 

 「コサメビタキ(小鮫鶲)」の世界的な分布は、Webウィキペディアの解説を参照すると、冬季は日本を始め中国、朝鮮半島、インド、ロシア東部そして東南アジアの各国に広く分布しています。夏季は、シベリア南部、朝鮮半島、ヒマラヤ山脈で繁殖し、冬季はユーラシア大陸南部、インドネシア、フィリピンへ南下し越冬します。日本には基亜種が九州以北に繁殖のため夏鳥として飛来します(☆)。戸隠の森には、雪解けの5月頃やってくるのでしょう。管理人の住む神奈川には、10月頃渡り途中の羽根休めで、権現山の水飲み場で観察することもあります。

 

 「コサメビタキ(小鮫鶲)」の全長は13センチメートルで、和名はサメビタキ(13~14cm)よりも小型であることに由来します。背面は灰褐色でお腹は白い羽毛で覆われます。体側面は褐色味を帯び、眼の周囲に白い斑紋が入り、眼先は白色をしています。クチバシはやや長く、黒色で、クチバシ基部はオレンジ色をしています。平地から山地にかけて落葉広葉樹林に生息し、群れは形成せず、単独かペアで生活します。食性は、動物食で昆虫などを食べ、枝先などに止まって飛んでいる獲物を飛翔しながら捕食(フライングキャッチ)をします。繁殖期は縄張りを持ち、高木の葉の無い樹上に皿状の巣を造り、3から5個の卵を生んで雌のみが抱卵します(☆)。

 

 「コサメビタキ(小鮫鶲)」とサメビタキはよく似ているため、その判別方法が良く紹介されています。サメビタキの方が大きいのですが、並ばなければ比較できません。アイリングが細く、腹の色が暗い、眼先が暗色であれば、サメビタキ。白く太いアイリング、腹の色が白、眼先の範囲が白ければ「コサメビタキ(小鮫鶲)」と判別できます。戸隠の森には秋しか訪れたことがなく、今後機会を見て夏鳥の到着する5月頃に是非訪ねて見たいと思っています。ツルマサキの果実が熟すまでいる、のんびり屋の「コサメビタキ(小鮫鶲)」さん。長旅に備えて栄養を沢山つけ、来年再び元気な姿を見せて欲しいと願っています。

 

注)    ☆印は、Webウィキペディアのコサメビタキの解説を参照し、編集しています。 

撮影場所;長野県長野市戸隠 戸隠森林植物園

撮影日;2022.10.19