薬師池の杜は、珍鳥の飛来しやすい場所か ? 今年の冬はシベリアなどから渡来した ? 「ホオジロガモ(頬白鴨)」の雌 ? が一羽、潜水仲間のホシハジロやキンクロハジロの群れに混じって越冬中。

 町田市の薬師池公園を久し振りに訪ねました。この公園は谷戸山の一角にあり、谷戸の真ん中には大きな池があります。池の周りにはイチョウやモミジが植栽され、黄葉の時期は水面が黄色や赤色に染まり別世界になります。この池には10月を迎えると冬の水鳥たちがやってきて賑やかになります。

 

 今年の紅葉シーズンは既に山を過ぎていて、モミジの葉も付いているのは僅かばかりです。池近くのモミジの枝は水面近くに伸び出し、川蝉が枝先近くに止まり狩りを行います。モミジの紅葉の時期は、コバルトブルーの川蝉とモミジの赤色が鮮やかに映えるため「モミカワ」狙いの野鳥写真家に人気のスポットになっています。この日も少しばかりのカメラマンが川蝉を待ち受けていました。カメラをセットしていた方に尋ねるとなかなか枝先に止まってくれないとのこと。モミジの葉が落ち、池面が見易くなったため、本来の止まり木の方に狩りを切り替えたのかも知れません。

 

 この池には冬季の水鳥として、ホシハジロやキンクロハジロが群れで渡来し越冬をしていますが、その中にまれに普通には見かけない珍鳥も逗留することがあります。過去には、2017年末頃クビワキンクロやメジロガモが飛来し、昨年はオシドリとトモエガモの越冬が見られました。今年は、雌と思われる、頬の白くない「ホオジロガモ(頬白鴨)」が一羽確認できました。この池には小魚が多いので、魚類を好物とする潜水系の水鳥に好まれているようです。確認した雌と思われる「ホオジロガモ(頬白鴨)」は、キンクロハジロやホシハジロの群れの中に溶け込み、行動を共にしていました。目が合うと直ぐ潜水してしまうので注意して観察しないと見逃してしまいます。背中の白色がホシハジロよりも濃く、柄があるので見分けは付きます。

 

 「ホオジロガモ(頬白鴨)」は、北ヨーロッパからシベリア、カムチャッカ迄のツンドラ以南の森林やウスリーで繁殖し、冬季は地中海、ペルシア湾、日本、中国、朝鮮半島などで越冬するタイプとアラスカ、カナダなどで繁殖し、アメリカ中部などで越冬するタイプの二つのタイプに分けられます(☆)。我が国へは、北日本に多く飛来し、本州中部以南には観察されていないとのこと(☆)。

 

 「ホオジロガモ(頬白鴨)」成鳥の雄は、全長が46センチメートルあり、体の割りに頭部が大きく見えます。成鳥の雄の頭部は、緑色の光沢がある黒色で頬の前面に白い白斑があります。この白い頬が和名の由来になっています。背中は黒く、胸、腹、尾羽は白色です(☆)。

 

 4月~6月にかけてが繁殖期で、繁殖期は森林帯の川や湖沼に生息します。越冬時は群れを作り、内湾や港など波の静かな海域に生息します。河口や内陸の湖沼に入ることもあります。潜水して甲殻類やイカ、貝類、魚類を捕食します(☆)。薬師池にいる「ホオジロガモ(頬白鴨)」は単独であり、群れに付いていけなくて羽根休めで逗留しているのかも知れません。

 

 「ホオジロガモ(頬白鴨)」の撮影などはこれまでに、東京都の羽村市を流れる多摩川や東京湾の浦安日の出三番瀬て確認したことがあります。この他にも、今回渡来している雌と思われる「ホオジロガモ(頬白鴨)」と同様、群れではなく単独で、小田原市アリーナ付近の酒匂川でも確認したことがあります。この時の個体は、雄のエクリプスでした。警戒心が強いので、群れでいるとなかなか近寄っては来ません。その点、薬師池の個体はホシハジロやキンクロハジロと共にしているため比較的近寄ってくれます。「ホオジロガモ(頬白鴨)」のクチバシは、成鳥の雄は黒色で雌はクチバシ先が黄色です。この個体は黄色味を帯びていますが、はっきりしていません。

 

注)   ☆印は、Webウィキペディアのホオジロガモの解説を参照し、一部引用させて頂いています。

 

撮影場所;東京都町田市野津田町 薬師池公園

撮影日;2022.12.02