「ヘラサギ(箆鷺)」を撮影に、ツルの飛来地先となる鹿児島県出水市に遠征。一万羽のツルに混じり、干拓地の沼で5羽の群れが元気に越冬。

 冬鳥として出水市に渡来するのツルの数はあまりにも多くて有名ですが、一箇所に偏ると鳥インフルエンザに感染した場合全滅の恐れがあるため、環境省は越冬場所の分散化に乗り出しているとのことです。以前訪れた際は一万七千羽を超える勢いでしたが、今年は半分に減少していました。

 

 出水市に飛来してくるツルの種類はナベヅルとマナヅルが殆どで、稀にカナダヅルやソデグロヅルなどが迷鳥としてやって来ます。管理人が訪ねた二日目に、到着したばかりのソデグロクロヅルと出水市のツル観察センターの屋上から観察できたのはラッキーでした。ただ警戒心が強く遠くの田んぼで餌を啄んでおり近くには来てくれませんでした。種類別の野鳥写真を掲載しましたが、豆粒大を拡大したもので証拠写真です。写真に撮れませんでしたが、畔を渡る際に一瞬羽根を広げており、袖先の黒色と羽根の白色が鮮やかに対比し大変綺麗で、飛翔している時が美しさを倍増させるような気がします。

 

 本題の「ヘラサギ(箆鷺)」は、東干拓地の沼に5羽の群れを確認しました。「ヘラサギ(箆鷺)」は、夏季にユーラシア大陸中部やインドなどで繁殖し、冬季はアフリカ、ペルシア湾岸からインドにかけての地域と中国南部に渡り越冬します(☆)。日本には数少ない冬鳥で、北海道から南西諸島まで渡来して来ます(☆)。九州では数が少ない(☆)とのことですが、ここ出水市にも5羽の小規模な群れが干拓地の沼で越冬していました。今回、そのうちの一羽がチュウサギと一緒にいる所を偶然見つけ、写真に収めることができました。管理人は過去に、夏羽のクロツラヘラサギを小田原市の酒匂川で観察したことがあります。長く黒いクチバシが印象的で、長さは20センチメートルもあります。「ヘラサギ(箆鷺)」のクチバシも同じくらいの長さです。クチバシの長い野鳥はシギ類などに多くいますが、サギ類では「ヘラサギ(箆鷺)」が断トツです。

 

 「ヘラサギ(箆鷺)」は、体長が約85センチメートル、翼開長は約125センチメートルあり、シラサギ類に似ています(☆)。首が短めで胴が太く、全身の羽毛は白色です。夏羽は、喉や胸が黄色味を帯び、後頭部に黄色の冠羽が現れます。冬羽は冠羽が短くなります(☆)。観察した個体は越冬中なので冬羽で、冠羽は殆ど認められません。名前の由来にもなっているクチバシが特徴で、先端は黄色くしゃもじのように丸みを帯び、目元を付け根に長い靴ベラのように細長く先端に伸びています。このクチバシ、高感度触感センサーの役割があるようで、水につけて左右に振り、クチバシに触れる魚類やカニ、カエルなどの餌を検知して採餌を行っています。長さが20センチメートルと長いので、検知範囲が広いのは好都合なのです。

 

 「ヘラサギ(箆鷺)」はシラサギ類に似ていますが、鷺の仲間は立つ時に胸を反らせ、飛ぶ時は首をS字型に縮めます。「ヘラサギ(箆鷺)」は立つ時に前のめりで、飛ぶ時には掲載写真のように首を伸ばして飛翔します。出水平野は、ツルだけではなくマガモやオナガガモなどカモ類に混じりミヤマガラス、コクマルガラスなど沢山のカラスも一緒に飛来しています。ネグラとなっているツル観察センター付近は、朝夕、ツルたちのネグラ立ちとネグラ帰りが行われますが、同行している野鳥たちもツルに混じって飛翔するため、空一面が見えない位に埋め尽くしてしまいます。これは見応えがあります。人的な開発が進み、「ヘラサギ(箆鷺)」の生息環境が狭められています。出水市のツル保護の取り組みには深く敬意を表します。

 

注)    ☆印は、Webウィキペディアのヘラサキの解説を参照し、一部引用させて頂いています。

撮影場所;鹿児島県出水市高尾野町下水流(しもづる) 東干拓地

撮影日;2022.12.20