宮ケ瀬の杜の奥、早戸川林道の斜面に枯れた萱が残り、その根本で動きを見せたのは、「カヤクグリ(萱潜)」の夫婦。萱の隙間から顔を覗かせ、お腹が空いているのか人目をはばからず木の葉を蹴散らし採餌に専念。

 昨日の夜から雨が降っていましたが、今日は朝から天気になり、久し振りに車を走らせ宮ケ瀬奥の早戸川林道を訪ねました。早戸川林道の途中の金沢橋近くの斜面には、タデ科の植物であるイヌシデの種子が沢山できており、これを目当てに赤い鳥「ベニマシコ(紅猿子)」が毎年越冬にやってくるのです。残念ながら雨の後のせいか会うことはできませんでした。

 

 管理人にとって早戸川林道は思い出の多い場所です。川蝉に魅了され公園デビューの野鳥撮影を卒業し、森林の野鳥撮影に舵を切る大きな節目の年でもありました。その手助けをしてくれたのが鳥仲間のTさんでした。そのTさんに初めて連れて来られたのが、この宮ケ瀬の杜の奥にある早戸川林道だったのです。初心者のうちは野鳥がどこで撮れるのか分かりません。宮ケ瀬の早戸川林道といってもどう行けばよいのか分からない状態でした。それを助けてくれたのが、Tさんだったのです。林道を歩きながら、この斜面にはどんな野鳥がいる、あの斜面にはイヌシデの種をベニマシコが食べに来るなどと細かく教えてもらいました。この斜面には「カヤクグリ(萱潜)」が撮れるんだよ、そんなことを思い返しながら斜面上の萱の根元を見ると僅かな動きが、「カヤクグリ(萱潜)」が夫婦で採餌をしていたのです。

 

 「カヤクグリ(萱潜)」の分布は、日本とロシアの一部(南千島)にしかいないようです。日本の分布は北海道、本州中部以北、四国、九州です。漂鳥で、夏季に本州中部以北、南千島で繁殖し、冬季になると低地や本州、四国、九州の暖地へ南下して越冬します。九州では冬鳥になっています(☆)。和名の「カヤクグリ(萱潜)」は、生息場所を反映するもので、文字どおり萱の藪の間を潜り抜ける野鳥ということなのでしょう。

 

 「カヤクグリ(萱潜)」は、全長が約14センチメートル、翼開長が21センチメートルです(☆)。写真を掲載しますので細かくは省略しますが、色彩は地味、雌雄同色とのことです。虹彩は茶褐色で眼の周囲に小さな白斑があります。亜高山帯から高山帯にかけてウラジロナナカマドやハイマツなどの林や岩場に生息します。林の中にいることが多く、岩場にはあまり出て来ません。冬季は、平地から低山地の林、灌木林、山間部の沢沿いの藪に、単独もしくは数羽の群れを成します(☆)。表題に「夫婦」と記しましたが、数羽の群れなのかも知れません。食性は雑食で小型の昆虫、幼虫類、クモ、草や木の種子などを食べます。夏季は昆虫、冬季は種子を主に食べます(☆)。観察した「カヤクグリ(萱潜)」は、人目をはばからず木の葉をクチバシでどかし、黒い丸い実を美味しそうに食べていました。

 

 野鳥撮影のイロハを教えてもらったTさんですが、昨年の冬、若くして他界されてしまいました。鳥仲間が欠けていくのはやるせないものがありますが、人生の定め、人一倍視力の良かったTさんのご冥福を祈ります。

 

注)      ☆印は、Webウィキペディアのカヤクグリの解説を参照し、一部引用させてもらいました。 

撮影場所;神奈川県相模原市鳥屋 早戸川林道

撮影日2023.2.25