東京から1,800Km南西の宮古島で野鳥観察。島北端のマングローブ林は干上がった根の周りに、トビハゼやカニが沢山出現。アカアシシギやチュウシャクシギ、セイタカシギなど渡りの水鳥がこれを狙って逗留し、渡りに備えて栄養補給。

 宮古島と言えば、野鳥撮影家の間では大野山林の水飲み場が有名スポットです。管理人は訪ねるまで知らなかったのですが、この水飲み場は、野鳥のため特別に造られた人工の溜池でした。池の縁はセメントで固められ、ところどころブルーの遮水シートが剥き出しになっています。恐らく地震か何かで遮水シートが破けてしまい、現在水は溜まっていません。

 

 期待して訪ねた大野山林の水飲み場ですが、前述のように水を引き込む水路も壊れており、池の部分も水たまりはなく草が伸び放題で殆ど管理されていません。宮古島には川がなく、雨が降ってもたまることがないので、この水飲み場は野鳥たちにとって貴重なオアシスだったはずです。野鳥たちは今、命の水をどのように補給しているのか、山林は広大なので地下水が湧き出るような場所があるのでしょうか。

 

 宮古島に初めて野鳥観察に行きたいと思ったのはコロナ感染症が確認され、感染の怖さを知った年で鳥仲間のMさんと計画を立てていたのですが、泣く泣く断念せざるを得ませんでした。今回は念願かなって、東京から1,800Kmの南西にある宮古島に、一週間の滞在をして来ました。宮古島の最大の野鳥撮影スポットの大野山林には、訪れるカメラマンは見当たりませんし野鳥の寄り付きもありません。残念ですが大野山林の水飲み場は断念し、島北端の島尻マングローブ林と池間島の池間湿原に絞って野鳥観察をすることとしました。

 

 島尻マングローブ林は、その名のとおり島の尻尾の部分で池間島湿原のある池間島に近い位置にあります。通常、マングローブ林は川の河口などで海水と淡水が混ざり合う「汽水域」の泥土に生育します。宮古島には川が無く、島尻マングローブ林の淡水の秘密は、河口付近に多くの地下水脈の湧き出し口があり、干潮時でも湧き出した水が川のように流れていました。干潮になると泥土が剥き出しとなり、沢山のトビハゼやカニが動いているのが見えます。石垣島や西表島のマングローブ林は、オヒルギやメヒルギ、ヒルギモドキなど沢山の種類がありますが、島尻マングローブ林は寒さにも強いメヒルギが多いようです。メヒルギの「メ」は、雌を意味し、根が女性のスカートのように水面に丸く根が降りています。根の構造は、スポンジ状で塩分を濾過する機能があり、干潮で根が露出すると空気呼吸を行うそうです。マングローブの根は、野鳥たちの格好の隠れ場所となり、採餌の途中で危険を感じると根の間に避難して姿を隠していました。

 

 今回、島尻マングローブ林で確認した野鳥は、初見となるアカアシシギ、そしてチュウシャクシギ、セイタカシギ、イソシギ、、コサギ、ダイサギ、クロツラヘラサギの全7種類です。アカアシシギは、採餌に夢中になって近くまできてくれ、人の気配に気が付くと慌てて飛び去り、飛翔も撮影することができました。クロツラヘラサギは、さらに大胆で大きなシャモジ状のクチバシを水の中に付けて左右に振り、獲物が当たるまで繰り返しながら移動して行きます。獲物を感知すると即座に大きな口を開け、獲物を呑み込んでしまいます。獲物を呑み込むまでは一瞬の出来事です。高速シャッターなのでトビハゼの採餌を撮影できました。採餌活動はなかなか見れませんので貴重な経験でした。

 

 池間島湿原では、初見のムラサキサギを確認してきました。宮古島から池間島には人口の長い橋が架かっており、無料で渡ることができます。宮古島には川がないのに水の漏れない汚泥層があるのでしょう。周遊道路の中央付近に入口があり、湿原までは道路は舗装されていません。未舗装の道路を最後まで進むと、5台位止められる駐車スペースがあります。湿原は鉄骨で出来た展望台があり、湿原を一望できます。最初、カルガモの泳いでいるのを見つけ、そのうちキンクロハジロなども顔を出します。じっと待っていると黒色のサギが、葦原の間から飛び立つのを確認できました。ムラサキサギです。湿原では二羽のムラサキサギを見つけることができました。このムラサキサギ、かなり警戒心が強く、葦の間に隠れてなかなか全体の姿を見せてくれません。

 

 今回、初めて訪ねた宮古島でした。季節によって野鳥の種類も違ってきますので、機会を捉えて再チャレンジをしたいと考えています。スギ花粉の無い宮古島は、しばしの花粉症を忘れる旅でした。以下に撮影した写真を掲載いたします。

 

マングローブ林の泥土にいるトビハゼやカニなどを採餌する「アカアシシギ(赤足鷸)」。

カニを採餌する「チュウシャクシギ(中杓鷸)」。

途中から採餌の参加に加わった「セイタカシギ(背高鷸)」

大きなシャモジを振りながら、クチバシに当たりを感じると瞬時に採餌する「クロツラヘラサギ(黒面箆鷺)」。

警戒心の強い、池間島湿原の「ムラサキサギ(紫鷺)」。二羽確認できました。

 

撮影場所; 沖縄県宮古島市 島尻マングローブ林、池間島池間湿原

撮影月日;2023.4.3~4.8